スパで性行為 女性マッサージ師に罰金刑、VIP客は無罪放免の「不条理」

フロリダ州ジュピターにあるジ・オーキッズ・オブ・エイジア・デイ・スパ(Photo by Barry Chin/The Boston Globe/Getty Images)

昨年、米NFL「ニューイングランド・ペイトリオッツ」のオーナー、ロバート・クラフト氏がフロリダ州ジュピターのジ・オーキッズ・オブ・エイジア・デイ・スパで、女性従業員を買春した容疑で逮捕・起訴された。今年に入り、クラフト氏の起訴は取り下げられた。一方、従業員(うち2人はクラフト氏にサービスを提供したとみられる)は、事件に関連して数千ドルの罰金の支払いを命じられ、数カ月間の保護観察処分を科せられた。

クラフト氏は2019年、フロリダ州の10カ所のマッサージ店を対象に行われた性的人身売買摘発捜査の一環で、売春教唆で起訴された。

当初、検察官の主張によれば、2019年1月19日と20日の2回に分けて捜査を行った際、クラフト氏が問題のマッサージスパで従業員と性行為に及んでいるのが監視カメラの映像に映っていたという。この摘発で、クラフト氏は24人の男性らとともに起訴された。彼は無罪を主張していたが、フロリダ控訴裁判所が問題の監視カメラの映像は違法に入手されたもので、証拠として認められないとの判断を下したため、起訴が取り下げられた。

スパのオーナー、フア・ザン被告は売春教唆と売春目的の店舗賃貸容疑で有罪を認め、1年間の保護観察処分と100時間の社会奉仕(または1000ドルの罰金)、さらに5000ドルの罰金の支払いを命じられた。また処罰の一環として性感染症検査を受けなくてはならない。

もう1人の女性シェン・ミンビー被告も、売春教唆1件で有罪を認めた。有罪答弁の直前に彼女の銀行口座は凍結され、当局は彼女のパスポートを押収した。彼女はジュピター市警察に2万ドルの罰金と、諸費用5000ドルを支払わなくてはならない。また、1年間の保護観察処分と100時間の社会奉仕が科せられた。3人目の女性はスパの店長レイ・ワン被告で、彼女も売春教唆で有罪を認め、1年間の保護観察処分を科せられた。彼女の場合、最大6623ドルの罰金を支払えば社会奉仕を免除される。2人も、処罰の一環として性感染症の検査を受けなくてはならない。

検察側は事件後、店舗で人身売買が行われていた証拠はなかったとの判断に至った。「どういうわけかサウスフロリダの警察官は、覚束ない立場の移民女性がやんごとなき事情で売春を選んだのだろうと考えるよりも、女性たちが国際犯罪シンジゲートによって売り飛ばされ、性奴隷にされたと信じたがっていた」。2019年10月、ヴァニティフェア誌のメイ・ジョング記者は穴だらけの捜査についての記事でこう書いている。

マッサージ店の従業員が処罰を受け、肝心の顧客が罪を免れるのは「実際、よくあることです」と、セックスワーカーの権利擁護活動家のケイト・ダダモ氏は言う。「正直なところ、今回の事件で唯一特異な点はメディアの関心を集めたことと、ガサ入れの結果が最初の起訴の後も報じられ続けたことぐらいです」とマックラッケン氏も同意見だ。「驚くことでもありませんよ、頭にはきますがね。頼るすべのない人たちが、結局は代償を払う羽目になるんです」

クラフト氏の弁護団にコメントを求めたが、返答は得られなかった。

【画像】「性奴隷」の実態を証言したカルト集団の元女性幹部たち(写真6点)

from Rolling Stone US

Translated by Akiko Kato

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