ローリングストーン誌が選ぶ、2020年の年間ベスト・コラボレーション・ソング

15.ギャビー・バレット feat. チャーリー・プース「I Hope」

Photo : Terry Wyatt/Getty Images

新進気鋭のカントリー界のスター、ギャビー・バレットのヒット作「I Hope」は、実際にはデュエット向けの楽曲ではない。というのも、同楽曲は浮気した元カレを罵倒する女性が主人公なのだから。だが、このリミックスでポップシンガーのチャーリー・プースは、男性の視点を見事に表現し、悪気はなかったんだと言いながら、ひたすら赦しを乞い、忘れさせようとする。J.F.



16.フューチャー & リル・ウージー・ヴァート「Real Baby Pluto」

Photo : Atlantic Records; Epic Records

ラッパーのフューチャーとリル・ウージー・ヴァートがコラボレーションプロジェクトの可能性をほのめかした数カ月後、ふたりはようやく宇宙空間的な傑作コラボ曲「Real Baby Pluto」をリリースした。タイトルの“Baby Pluto”はリル・ウージー・ヴァートのニックネームであり、彼の別のペルソナを表現しているだけでなく、フューチャー(別名”Pluto”)と5年半近くにわたって彼が取り組んできたサウンドへのオマージュでもある。2016年の「Seven Million」や今年の「All Bad」といったトラックでタッグを組んで以来、ふたりの化学反応は必然だった。だから、16曲+8曲が収録されたデラックスエディションが発売されたのは意外なことではなかった。Wheezy、Zaytoven、DJ Escoといったプロデューサー陣が手がけた不気味で未来的なビートに乗ってジョージア州アトランタが生んだスーパースター、フューチャーとペンシルベニア州フィラデルフィアが誇るMCがバースチェンジを繰り広げる。2020年は別の惑星でふたりのラッパーの仲間に加わり、落ち着いたところで地球に戻るのはどうだろう? D.G.



17.テイラー・スウィフト & アーロン・デスナー「Willow」

Photo : Beth Garrabrant*; James Goodwin*

カントリーミュージックの革新者、売れっ子ソングライター、スタジアムを総立ちにさせられるポップスターなど、2020年以前のテイラー・スウィフトにはたくさんの肩書きがあった。だが、そこにはインディー/フォークの魔術師は含まれていなかった。いつも忙しいスウィフトには——かれこれ13年間アルバム制作/プロモーション活動/ツアーというサイクルで生きてきた——しばしの休息が与えられてしかるべきだった。とはいっても、大人になってからずっとアーティストとしての存在感を維持し、世間の人たちを喜ばせるために常に新しい自分を発掘しつづけてきた人が完全に電源をオフにするのは簡単ではない。そんなとき、パンデミックがスウィフトを静けさへと押しやった。後ろめたさや忘れられることへの恐怖にとらわれず、彼女はたくさんの想いと向き合い、デビュー以来ファンのために酷使してきた作曲筋肉をゆったりとストレッチすることができた。ツアーが中止になったことで、もはや“スタジアム・ソング”を作る必要もなかった。人々は自宅に閉じ込められていたため、通勤・通学用の“ラジオ・ソング”も不要だった。メインストリームにふさわしいものを作らなければいけないという呪縛はすべて、突如として消え去ったのだ。その代わりに生まれた『フォークロア』と『エヴァーモア』は——いずれもザ・ナショナルのアーロン・デスナーとの共作で、ほぼ全曲のプロデューサーをデスナーが務めた——山小屋の暖炉の前にワイングラス片手にスウィフトがひょっこり現れ、頭のてっぺんをパカっと開いて中身を注ぎ出したかのようなサウンドである。複雑なリリシズムをめぐる空間作りの名人としてすでに知られていたデスナーは、理想的なコラボレーターだった。デスナーは、20年間のザ・ナショナルズの経験を通じて最小主義に陥ることなく軽快な独自のプロダクションスタイルを確立していた。複数の層で構成されていることに変わりはないが、ストーリーテリングは決して損なわれていない。デスナーと一緒のスウィフトはかつてないほど実験的で、オルタナティブで、そして詩情に富んでいた——いままでにないほど高い評価を得たことは言うまでもない。S.H.

>>関連記事:テイラー・スウィフト『フォークロア』を考察「殻を破り、悲痛さを露わにした最高傑作」



18. カーディ・B & ミーガン・ジー・スタリオン「WAP」

Photo : Youtube


カーディ・Bとミーガン・ジー・スタリオンによる初のコラボ曲「WAP(Wet-Ass Pussy)」は、まさに私たちが大胆不敵なふたりのラッパーに期待していたとおりのものだった。「WAP」のあっぱれな点は、1990年代のクラブの定番曲「Whores in This House」のサンプルにひねりを加えてセックスに肯定的な表現満載のアンセムへと変えたことだ。「WAP」が持つ影響力は、数多くのTikTokチャレンジからも一目瞭然であると同時に、保守的右派の人たちからの不人気は、同楽曲がポップカルチャーに与えるインパクトを増大させた。「WAP」がリリースされてからの7日間のストリーミング回数は、ほとんどのストリーミングプラットフォームで首位だ。その一方、カーディ・BはInstagram Liveで日常的にトランプを激しく批判してはフォロワーに(大統領選の)投票を促し、ミーガンはソーシャルメディアと10月に出演した米・深夜番組『サタデー・ナイト・ライブ(SNL)』で黒人女性の保護を訴えるなど、社会正義問題に取り組んだ。セックスもいいけれど、2020年は行動主義こそが女性の新たな悦びなのだ。R.C.



From Rolling Stone US.

Translated by Shoko Natori / Written by EMILY BLAKE & ROSALIE CABISON & TIM CHAN & JON DOLAN & JON FREEMAN & DEWAYNE GAGE & SAMANTHA HISSONG & ETHAN MILLMAN & ISABELA RAYGOZA & BRITTANY SPANOS

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