女性死刑囚の刑執行をめぐる悲劇、虐待とトラウマと精神疾患

精神疾患の場合、死刑は免除されない

ー2002年、最高裁判所はアトキンス対バージニア州の裁判で、精神障害の患者を処刑するのは憲法修正第8条――残虐かつ尋常でない刑罰からの保護――に違反するとの判決を下し、知的障害によって死刑裁判の「信頼性と公平性が疑わしくなる」と述べました。あなたご自身もモンゴメリーの脳損傷を示すMRIスキャンや、脳の機能不全を示すPETスキャンの画像を提出しています。それで死刑から守られるはずだったのでは?

彼女は知的障害ではありません。脳損傷はありましたが知的障害ではなかったので、リサは条件から外れていたんです。ですが、2002年のアトキンス裁判で問題視されたことはすべて、リサのような重度の精神疾患者にも同じく当てはまります。被告人は自己弁護する能力が欠けているため、陪審も精神疾患の影響を理解しないままで終わってしまう。リサは公判中、巡回控訴裁判所の治療を受けていたため、薬漬けで心ここにあらずの状態でした。彼らも彼女が精神を病んでいることに気づいていたんです。

【画像を見る】知的障害者の少女がレイプされた「グレン・リッジ事件」の加害者たち

ー精神疾患の場合、死刑は免除されないのですね?

そうです。法曹界の多くの人々が死刑免除の主張を展開し、裁判所にそれを認めさせようとしています。議会でも現在検討されているところです。オハイオ州では重度の精神疾患の患者は死刑判決に該当しないという法案が可決し、州知事も署名しました。これは過去にさかのぼって適用されます。双極性障害や統語失調症、外傷後ストレス障害など、対象となる特定の障害も定義しています。

(慈悲を求める嘆願書には)検事からの支持もいただきました。この手の裁判では死刑を求刑するべきではない、なぜならその人物が精神疾患を患っていて、トラウマを引きずっていることは――犯罪を見ただけでも――明白だからだ、と皆さんおっしゃいました。

ーリサはジョー・バイデン次期大統領が就任する1月20日を指折り数えてカレンダーに印をつけていました。彼が連邦政府による死刑の終結を公約に掲げていたのを知っていたからです。政権が違っていたら、慈悲も認められていたと思いますか?

当然です。何度も何度も頭をよぎりましたよ、「8日あれば」とね。バイデン大統領ならきっと、連邦政府の死刑廃止という公約を果たしていたと思います。すでにアヤンナ・プレスリー下院議員とディック・ダービン上院議員が法案提出の意図を公表しています。実際どれだけのスピードで実現するかはわかりません。ですがこの国の大統領は代わりました。候補者が死刑反対を口にすると大統領選に勝てない、という状況から、政治的に死刑反対を口にするだけでなく、実際に連邦レベルで廃止することが可能なところまで来ました。その点がせめてもの慰めです。

Translated by Akiko Kato

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