規格外の大型新人ブラック・カントリー・ニュー・ロード、ポストジャンル世代のバンド哲学を語る

歌詞と音楽は別の場所に存在している

―バンド名に含まれるBlack Countryという言葉は「Science Fair」をはじめとしてアイザック(・ウッド/Vo,Gt)の書く歌詞にも何度か登場します。この言葉は何を象徴していると思いますか。まさかイギリスのことじゃないですよね?

タイラー:特に……「これ」といった意味はない。

ルイス:バンド名にまつわるものであって、自己参照して内輪受けしている程度のことじゃないかな。

タイラー:そう(苦笑)。

ルイス:だから、僕は意味を特定するつもりはないというか、自分には分からないし……その質問はたぶん、彼(アイザック)にぶつけた方がいいんじゃない? ぶっちゃけ僕たちプレイヤーの側は、彼の歌う歌詞の内容についてはやや曖昧だから。

メイ:何を言っているのか、あんまり分からないことは多い。



―(笑)そうなんですか。あれは音楽に触発されて生まれる歌詞ですよね? 音楽が先で、そこに彼が歌詞を乗せるスタイルなんじゃないか、と。

ルイス:うん。

―あなたたちなりにそのコンポジションの雰囲気を解釈していると思いますが、演奏中に歌詞を耳にして「えっ、そういう歌詞なの?」と驚くことはありますか? それとも、彼の歌っていることには大体共感できる?

タイラー:正直、彼が何を言っているのか、演奏中はほとんど聞こえない(苦笑)。

―かなり激しくシャウトしているように聞こえますが。

タイラー:(笑)演奏にものすごく集中しているから、他は聞こえない! それとか、誰かを相手にプレイしていると歌は耳に入ってこない。演奏している間、私は主にルーク(・マーク/Gt)とチャーリー(・ウェイン/Dr)の演奏に半々ずつ耳を傾けながらプレイしているし、アイザックが何を歌っているかは聴いていなくて。でも、たまに彼が歌っていることが断片的に耳に入ってきて、そこで「うわっ、強烈!」とか「ああ、良いな」、「エモーショナルだな」程度には感じるけど、それ以上になることはない。だからある意味、アイザック本人を除く残りの6人にとって歌/歌詞は別の場所に存在している、ふたつの異なる世界が存在しているのに近い、みたいな? でも、私自身がコネクトしているのは音楽パートの方であって、歌詞ではない。最初に出来るのは音楽だし、全員で一緒に作った音楽だから、そうなって自然。それにアイザックの書く歌詞にしても、あれは彼が自分ひとりで書いてきたケースが多い。もう出来てる。彼の作詞はまた別の場所から出て来たってことだし、そうやって書いたものを、彼が私たちの作った音楽に持ち込んでくる。そんな感じ。

―ステージ上で同じ空間で演奏し即興やジャムが起きていたとしても、そこで全員がインタラクションしているわけではない、ということ?

ルイス:いやだから、ステージで演奏している時に僕たち(ヴォーカル以外のプレイヤー)があまり耳を澄ませていない、反応する率がいちばん低いのはヴォーカル部だ、ということ。楽曲のセクションが変化する箇所、歌詞の流れを聴きながら「あ、ここで曲が別の方向に切り替わる」というタイミングをたまに掴む場面を除くと、ヴォーカル部とはまったく関わり合っていない。もちろん、アイザックの弾くギターとはがっちりインタラクトしているよ。ただ、彼のヴォーカル部とはそんなに相互作用していない。さっきタイラーが言ったように、確実に別個の存在なんだ。ほんと、(苦笑)それ以上は僕にもなんとも答えようがないなぁ。少なくとも自分に関して言えば、ライブで使うモニター・スピーカーのミックスでヴォーカルの音量は確実に低い。モニターに入れるのはバイオリン、シンセ、ベース・ギターにハイハットくらいだ。

タイラー:同時に何もかもに耳を傾けるのは、どだい無理な話なわけで。自分のモニターにどのサウンドを含めるのが必須か、そこはすごく慎重に決めなくちゃならないし、たぶん私たちの誰ひとりヴォーカルをモニターに含めていないと思う。そうは言っても、私たちにとってはヴォーカル部も楽器のひとつみたいなものであって。歌詞そのものとはあまり結びついてはいないけど、楽曲の中で何かが起きるポイントとしてあれらの言葉を耳にしている。言い換えれば、意味のある言葉として歌詞を聞いてはいなくて、純粋に楽器演奏の目的であれらに耳を傾けているっていう。

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