DMXよ永遠に スウィズ・ビーツが語る『Exodus』制作舞台裏 

スタジオで過ごした時間

ー彼は外部のコラボレーターを多用したがらないラッパーで有名でした。今回のプロジェクトのフィーチャリングに関してはどんな風に思っていたんでしょう?

あいつも喜んでたよ。アッシャーが加わったときはあいつもぶっ飛んでたね。俺のワイフ(アリシア・キーズ)がスタジオでピアノを弾くと、あいつはお気に入りの古い曲をリクエストしていた。1人のファンになって堪能していた。スヌープ・ドッグも様子を見に顔を出しては、俺たちにメシを作ってくれた。Griseldaのスタジオに行って、そこの連中とラップしたりもした。U2のボノはあいつにアートワークを描いたり、自分の声が伝説の声と一緒に並べられるなんてすごいことだ、と手紙を書いたりしてくれた。





ここまでくると、あいつはかなり気分が乗ってきた。俺もあいつのそういう姿を見てうれしかったよ。きっと次は2カ月間仕事に励んで体を鍛えるだろうってね――。薬を断ってからあいつはかなり体重が増えていた。「そろそろこの肉を落として、本腰を入れるか」と言ってた。それが奴のエネルギーなんだ。だからこんなことになったときは本当に不意打ちだった。あいつは集中してたからね。そんな気配は微塵もなかったんだ。

俺たちのもとを去る前にあいつがたどった道筋を見れば、あいつの形跡がちゃんと残っている。あいつはハッピーな状態だった。インタビューも買って出てくれた。「俺は仕事しに来たんだ、アルバムに取りかかったなら俺も下地作りをしなきゃな」ってね。あいつはそんなことを考えていたんだ。あいつが使命を果たそうとしてくれたことが、俺もうれしいよ。

ーXとジェイ・Zは長い付き合いですから、2人が一緒に曲をやったというのは大事件です。ジェイとの話し合いはどんなものだったんでしょうか?

いい話し合いだったよ。「俺は奴の敵じゃない、仲間だ。曲はプロジェクトにぴったりだ。1日考えさせてくれ、そしたら返事する」とね。3日後に返事をくれて、それで決まりだった。断りようがない話だったし、プロジェクトには絶対必要な曲だった。そうなるように俺たちが仕向けたからさ。

ー今振り返って、彼とスタジオで過ごした時期の中でとくに心に残っている出来事や会話はありますか?

全部だよ。一緒にスタジオで過ごすのが最後になると知ってたら、スタジオに戻ってもっといいのを録り直そう、と言えたのに。毎日が活気とエネルギーに満ちていて、退屈な瞬間などなかった。ブラザーとまた歴史を書き換えるんだと思うとうれしかった。あいつが笑って幸せそうなのを見てるだけでね。彼が乗り気じゃないとき、疲れていたり考え事をしていた時はただ「家に帰れ」と言った。プレッシャーはなし。仕事じゃないんだ、楽しんでやってるんだから、とね。

Translated by Akiko Kato

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