Yogee New Waves 角舘健悟が語る、雑多な世界で見出した歌のバランス感覚

エッジーさと優しさが共存する歌声

─そういう部分で、具体的にイメージしているシンガー、ヴォーカリストっていますか?

角舘:……ルイ・アームストロングかなあ。まあ、めちゃめちゃ特殊。例えば、“Heaven”の発音の“ven”のところ、濁音の響きみたいなのが低音に繋がってる感じがする。コロナ中によく聴いてたかな。あと、(椎名)林檎さんも。ある意味、ふしだらな感じもするエロティック。アニタ・オデイ、ヘレン・メリルとかもそうだけど、ふしだらであればふしだらであるほど美しくなっていく世界観。あの歌の感じが今すごく表現したい感じなんだよね。

─角舘さんは「優しい声質、歌い方」と評されてきたことも多いでしょう? それに対して本意ではなかったりもした、と?

角舘:もっと言いたいことがあるんだと思う、自分の中で。ファーストの時のエッジーな感じをダブル(ダビング)で出して、もっとハッキリと感情を吐露したいとは思っていました。ただ、そうした思いで歌について変化を探っていた過程で、喉の調子が良くなくなったんだと思う。エッジーな部分でそれを実践しようとしたら無理が出たというか。なので、負のエネルギーで曲を書くことをやめて、もっと明るくてポジティヴな感じで曲を書いたりもしたんですけど、それじゃダメだってことに気づいて。ちょうどその頃、治療のおかげで喉が元に戻った。だからこそ、負のエネルギーと陽のエネルギーをミックスしたスタイルになったんだと思う。調子が悪いことに気づいてなかったらもっと柔らかい、フラワーな感じになっていたと思うな。実際、1日30分までしか話してはいけません、ってお医者さんに言われて、それが結構つらくて自分の中でバグってしまって。どうしていいかわからなくなったんだけど、また自由に話したり歌えるようになったら、自然と昔のエッジーな歌い方と、柔らかい優しい歌い方が共存したような感じになって……結果としてはすごくよかった。もちろんまだ模索してる。昔は幼い声を高く使ったりしていたんだけど、声が渋くなっていて、自分の中で、表現における男性性が強くなったかもしれない。

─新作を聴いても声域が少し下がった印象は確かにあります。

角舘:テンションが高い時だったら高い鳥のような歌い方ができてたと思うんだけどね。その頃は食事制限もしてたしボイトレもしていたし。でもその変化が今回のアルバムには現れているんですよ。半々かな……調整前と調整後にそれぞれ歌入れしたものが入っています。

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