テレヴィジョンの故トム・ヴァーレインが「究極のギターゴッド」と称された理由 

トム・ヴァーレイン(Photo by REDFERNS)

1月28日に亡くなったトム・ヴァーレイン(Tom Verlaine)を追悼。テレヴィジョンをロック界屈指のバンドに育て上げたものの、突如解散。しかし彼は、常に新たなギタープレイへの探求を止めなかった。

さようなら、トム・ヴァーレイン。偉大なアメリカン・ロックギタリストは「ヘンドリックス」だけではない。ヴァーレインは、2023年1月28日に73歳でこの世を去った。彼は、どんなギターの名手も到達できなかった高みへと上り詰めた。1970年代に彼が結成したテレヴィジョンは、ガレージバンドとして、CBGBパンクシーンで崇高なサイケデリックを生み出した。テレヴィジョンは、『Marquee Moon』と『Adventure』という70年代を代表する2枚のギターアルバムで音楽的な絶頂を極め、解散した。しかしヴァーレインがフェンダー・ジャズマスターから弾き出した音楽は、今なお輝きを失わない。

1974年にパティ・スミスは「彼の無骨で倒錯した情熱が籠もったリードギターは、千羽の青い鳥が一斉に叫んでいるようだった」と書いている。彼女なりの控え目な表現だった。テレヴィジョンとの「Marquee Moon」や「Kingdom Come」のジャムにしろ、「Breakin’ In My Heart」や「Days on the Mountain」といったソロ作品にしろ、トム・ヴァーレインのサウンドは常にユニークだった。彼がレジェンドたる所以を簡単に理解したければ、楽曲「Little Johnny Jewel」を聴けばよい。特に1978年のサンフランシスコでのライブを収録したアルバム『Live at the Old Waldorf』の、最初の3分間は圧巻だ。彼の奏でる切迫したハイトーンは、まるで空に突き刺さるかのようだ。



彼のギターを愛する者にとって、大きな喪失だ。最後の最後まで、ギターの名手としての腕は鈍っていなかった。事実、滅多にあることではなかったが、気分が乗るとギターを取り出して人々を吹き飛ばした。しかしステージに立つたび、彼のプレイは進化していた。1977年に彼は、「ギターネックのここからここまで行くのに、いくつもの未知の通り道がある」とローリングストーン誌に語っている。彼はプレイするたびに、常に新たなギタープレイへの探求を止めなかった。

ヴァーレインはニューヨークの究極のギターゴッドであり、テレヴィジョンはニューヨークで最高のバンドだった。パンクファッションに身を包んだどこか神秘的なギター少年たちが、詩人のように歌う。リチャード・ロイドのストラトと、ヴァーレインのジャズマスターが、グレイトフル・デッドに対抗したCBGBサウンドをかき鳴らす。活動期間は短かったものの、彼らの影響力は広く長く続いている。稲妻のように火花を散らすトム・ヴァーレインのギターは、南部ジョージア州のR.E.M.、ダブリンのU2、シカゴのウィルコ、クリーヴランドのペル・ウブ、カリフォルニアのペイヴメント、ローワーイーストサイドのソニック・ユースなど、後に続く世界中のバンドに影響を与えた。しかし影響を受けたバンドも、テレヴィジョンのユニークできらめくサウンドを決して真似できなかった。ペイヴメントが2022年に行った再結成ライブで、自身の楽曲「Folk Jam」からテレヴィジョンの「Marquee Moon」へとメドレーで続けたシーンは、見ものだった。スティーヴン・マルクマスとスパイラル・ステアーズが、自分たちはもちろん、多くのギタリストに大きな夢を抱かせたギターグルーヴを奏でた。


Translated by Smokva Tokyo

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