BIGYUKIが明かす、海外の超一流が集う場でグラスパーやメルドーから学んだこと

 
グラスパーやメルドーから学んだこと

―話を聞いていると、ブルーノート・クルーズでの体験は本当に大きかったみたいですね。

BIGYUKI:そうですね。この衝撃を忘れずにどうやって自分のものにするか、今後の自分に活かせるかをずっと考えていて。最近はピアノを練習しているんですよ。NYに帰ってからピアノがある練習スタジオを一日2時間借りて、練習をちゃんとしてます。クラシックも弾いてますね。



―ジャズの世界は大きなコミュニティで、みんなが繋がっていて、お互いに影響を与え合っている。ブルーノート・クルーズはそのためのハブになっていると。

BIGYUKI:それはデトロイトジャズや、ニューポートといったフェスでも感じました。世代とか関係なく、みんなお互いのことを知ってるし、コミュニティ感がある。クルーズはそういうフェスが1週間ずっと続いている感じで、ずっと一緒にいるからミュージシャン同士の会話もできるし演奏も見られる。グラスパーは「ジャズ・フェスの同窓会」と表現してました。

―そういえばグラスパーが以前、グレゴリー・ポーターが『Black Radio 3』に参加したのは「クルーズで一緒になったのがきっかけだった」と語ってました

BIGYUKI:俺がデリック・ホッジのバンドで演奏しているとき、ステージ横でグラスパーとドン・ウォズ(米ブルーノート・レコードの社長)が見てくれて。ドンは俺の演奏を見るのが初めてだったらしく「ユキ、超良かったから、新しく録音したものがあったら送ってくれ」と言ってくれました。

夜はグラスパーが毎日ジャムセッションをしていたから、「おい、BIGYUKIいるか?」と呼ばれて、入って弾いたりしました。そしたら、グラスパーがメシを食うからと離れちゃって、キーボードが俺一人になっちゃって(笑)。ジャスティン・タイソン、ホセのバンドのジャリス・ヨークリー、エレ・ハウエルっていうクリスチャン・スコットのバンドの若手ドラマーが叩いていて、そこにベン・ウィリアムス(のベース)も入ったりしているのを俺が回す感じになって焦りました(笑)。ブルーノート・クルーズはいろんな人が繋がる場所だと感じましたね。

ブラッド・メルドーともあそこで知り合ったんですよ。最高の話があるので、してもいいですか?

―どうぞ(笑)。

BIGYUKI:クルーズにはリハーサルルームが一つだけあるんですよ。その入り口に紙が貼ってあって、時間ごとに区切られた表になっていて、使いたい時間のところに自分の名前を書いて予約する方式。昼や夜はリハーサルで埋まっていて、朝はほぼ空いてるんですけど、朝の一番早い時間はどこも毎日「ブラッド・メルドー、ブラッド・メルドー……」と書いてあって(笑)。朝イチはメルドーがひたすら予約してたんですよ。コービー・ブライアントみたいだなと思って。

―イチローみたいですね(笑)。いつだって誰よりも早く練習している。

BIGYUKI:俺はブラッド・メルドー大好きだからすぐに影響されて、その後の時間に「BIGYUKI、BIGYUKI……」ってストーカーみたいに書いたんですけど(笑)。このあいだ、日本でブラッド・メルドーのコンサートを観に行って、終わってから楽屋に行って「クルーズの時、練習室をブラッドが毎朝予約してたから、ピアニストのあいだで噂になってたよ」と伝えたら、「日本で自分が書いたコンチェルトを弾くから、その練習をしなければいけなかったんだよ」と言ってました。

さっき話したように、NYでスタジオを借りて練習している理由はこれですね。ブラッド・メルドーを見て、俺も練習しなきゃと思ったんですよ。クルーズでは毎日演奏するんだから練習なんかしなくていいとみんな思ってたのに、ブラッド・メルドーほどの人が毎朝練習してるわけで。クルーズの後半にはエメット・コーエンやジェラルド・クレイトンも練習するようになってたし、みんなブラッドに影響されてましたよ。


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