マインドコントロールでインフルエンサーを恐怖支配、米カルト集団の手口

2022年3月、同社が実は「カルト集団」で、所属ダンサーを家族や友人から引き離し、財産を管理していたとの疑惑がソーシャルメディアで出回り始め、ローリングストーン誌もこれを報じた。複数の情報筋がローリングストーン誌の取材に応じ、知り合いのダンサーがおかしなふるまいをし始め、7M社で働き始める以前のような付き合いを拒み始めたと語った。

当時、ローリングストーン誌のインタビューに応じた7M所属ダンサーは1人もいなかった。今では元ダンサー3人が原告に加わり、そのうち2人がローリングストーン誌の取材に応じて、シン氏と同氏の会社を訴えることにした決意を語ってくれた。「あそこには2年間しかいませんでしたが、(シン氏や)教会にのめり込んで苦しんだ2年間でした」。2020~2022年に7Mに所属していたヒップホップダンサー、カイリー・ダグラスさんはローリングストーン誌にこう語った。「もう誰も同じ目に遭ってほしくない。洗脳、心理操作、人格破壊――まやかしの希望に時間や労力、財産、人生の全てを捧げるようなことをしてほしくないんです」(これら容疑はすべて反訴状にも盛り込まれている)。

ダグラスさんは5年来の恋人でクランプストリートダンサーのオーブリー・フィッシャー=グリーンさんに連れられてシェキナ教会に入信し、7M社に所属したが、やがてすぐに脱会した。フィッシャー=グリーンさんが入会したのは2020年秋で、11月からは7M社の仕事もするようになった。反訴状には「7M社はすぐさまオーブリーさんの仕事を取り仕切った」とあり、シン氏がフィッシャー=グリーンさんのために会社を作らせ、税務担当者をつけたと記されている。200万人のTikTokフォロワーを抱えるフィッシャーさんが仕事を決めると、7M社が彼に代わってギャラを受け取り、20%の手数料を引いてからフィッシャーさんに渡すのが常だったという。のちにフィッシャーさんは、7Mが依頼主からもマネージメント料を取っていたことを知った。

訴えによると、7M社は他にもフィッシャーさんから金を巻き上げていた。2022年4月、フィッシャーさんは歌のプロモーション活動費と称して6000ドルをピンはねされた他、シェキナ信者から「高額の」撮影費も請求された。またシン氏の勧めで、シェキナ教会に収入の10%以上を寄付していたという。フィッシャー=グリーンさんがローリングストーン誌に語った話では、シェキナ信者は「与えた分だけ見返りも大きい」と教えられていたそうだ。反訴状には、「シェキナ教会に所属していた終盤には、オーブリーさんも虚無感を覚え、ロバート氏やシェキナ教の人々が隠し事をしていると感じ始めた」とある。彼は2022年8月に教会を脱会し、7M社との仕事も辞めた。

ダグラスさんとフィッシャー=グリーンさんがローリングストーン誌に語った話では、厳密にいえば信者が親しい人と教会の外で連絡を取るのは禁じられていなかったが、「控えるよう」言われていたという。訴状によれば、ダグラスさんが休日に家族に会いに行くと、教会信者の前で指導役から「ママのパイパイを吸いに行った」と言われた。ダグラスさんのまた指導役はシェキナ教のために予定を空けておけとしつこく迫り、ダグラスさんが税務処理を200ドルを払って信者にやってもらうのではなく、家族の友人に無償で頼むつもりだと言うと、「怒鳴りちらした」そうだ。

さらに反訴状によると、ダグラスさんとフィッシャー=グリーンさんがシン氏所有の賃貸住宅への入居を断ったため、シン氏から集会中に「怒鳴られた」という。反訴状いわく、「被告はオーブリーさんとカイリーさんを、シェキナ教と神に『従わない』信者として見せしめにしようとした」。

7M社はダグラスさんの仕事を減らし、彼女が組む7M所属ダンサーや、動画を撮影する日程を制限した。「カイリーさんは、フォロワー数の多いダンサーが先に投稿して注目を集めるまで、動画を投稿するのは待つよう指示された」。そのためにソーシャルメディアで露出を上げるのを「阻害された」と彼女は主張している。

Akiko Kato

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