デペッシュ・モードが語る、最新アルバム『Memento Mori』と盟友の死

 
ワールドツアーとその先の展望

ベルリンで行われた新作発表の記者会見は、機材のクローズアップの短いモンタージュ映像で幕を開けた。バックではデペッシュ・モードらしい深いエコーがかかった曲が流れ、ファジーで脈打つようなシンセベースのラインと、オペラを思わせるボーカルが印象的だった。カメラのアングルが徐々に引いていき、スタジオでの2人の姿を捉えると、ガーンがこう歌い始める。「俺たちは再び亡霊と化すだろう」

ガーンもゴアも、『Memento Mori』の収録曲のタイトルを明かす気はないようだったが(記者会見の数日前の時点では、当日披露したどの楽曲のタイトルも最終決定されていなかった)、ごく自然な流れでアルバムとしてまとまったことを強調していた。「シネマティックなムードがあると思う」とガーンは話す。「『これが自分の世界だ』という認識から始まり、『どう生きるべきか』を終着点とする、一種のバーチャルトリップのようなものだ」。ガーンはその音楽性について、メランコリーでありながら希望と喜びを感じさせるとしている。



アルバムを完成させたバンドは今、結成メンバーのひとりが欠けた状態でどうやってライブをするかについて考えているところだ。「フレッチの代わりを探すつもりはない。そんなことをする理由がないからだ」。ガーンはそう話す。「探したって無駄なんだ。フレッチの代わりなど存在しない」。ガーンとゴアは、90年代後半以来デペッシュ・モードのツアーメンバーを務めているマルチ奏者のピーター・ゴーデノとドラマーのクリスチャン・エイナーを含めた4人で、新作からの曲を生演奏する(バンドの長年にわたるコラボレーターで、映画監督にしてフォトグラファーのアントン・コービンは、ツアーでのルックについて既にバンドとアイデアの交換を始めている)。

ガーンはツアーでフレッチへのトリビュート曲をプレイする予定かという記者からの質問に対し、現時点ではまだ検討中だが、フレッチが好きだったバンドの曲を絞り込んでいると語った。「俺たちがちゃんとやってるかどうか、彼はどこかから監視しているだろうからね」。彼は笑ってそう言った。

また別の記者は、バンドの「アンプラグド」ツアーの開催の可能性について訊ねた。「俺たちはエレクトロニックなバンドだから、ケーブルを抜くわけにはいかないさ」。ガーンが静かに笑いながらそう話し、ゴアはこう付け加えた。「電池を使うって選択肢もあるがね」



過去のツアーはヨーロッパから始まることが多かったが、『Memento Mori』ツアーは北米からスタートする。「アメリカから回り始めるっていうのがいつ以来なのか思い出せないくらいだ」とゴアは話す。「初めてではないんだろうけど、それが新鮮に感じられたんだ」(ヨーロッパツアーは5月16日からスタートする。バンドは2023年、マディソン・スクエア・ガーデン、シカゴのユナイテッド・センター、トゥイッケナム・スタジアム、Stade de France等のステージに立つ予定だ)。また2023年9月には北米ツアーを再開し、各地のアリーナで29公演を行う。

その時まで、友人の死を悼みながらも、2人は前に進み続ける。「アンディなしでこの街に来るのは妙な気分だ。過去に泊まったホテルや、何度も行ったバーを目にすると尚更ね」とゴアは話す。「現実と向き合わされたよ。これから俺たちがやることは全部、今までとは違うものになる。覚悟を決めて、ベストを尽くすだけだ」

From Rolling Stone US.




デペッシュ・モード
『Memento Mori』
配信リンク:https://depechemjp.lnk.to/MementoMori

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Translated by Masaaki Yoshida

 
 
 
 

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