松崎崇が語る、配信レーベル「VIA」の2年半、マカロニえんぴつやEveから学んだ「A&Rの役割」

松崎崇(Photo by Mitsuru Nishimura)

さまざまなカルチャーへの「こだわり」と「偏愛」が強いエンタメ業界のキーマンに話を聞く、連載インタビュー企画「ポストコロナの産声」。2020年に全世界を襲ったコロナ禍において苦境に立たされた音楽業界のスタッフたちは、価値観が変容していく日々の中でどのように過ごしてきたのか? そしてアフターコロナに向けてどう考えているのか? そうした中で感じたカルチャーの面白さや、この業界で仕事する醍醐味を赤裸々に語ってもらう。

第2回目のゲストは、トイズファクトリーの松崎崇。Eve、マカロニえんぴつのA&Rを担当し、配信に特化した社内レーベル「VIA」を立ち上げ、りりあ。、Midnight Grand Orchestra、TAKU INOUE、holo*27といったアーティストを抱える。コロナ禍に設立したレーベル「VIA」について、そして自身のルーツについて語ってもらった。

―松崎さんは、トイズファクトリーのクリエイティブ1の部長でありながら「VIA」レーベルのヘッドを兼任されているんですよね。

トイズファクトリーでA&Rやりながら、社内に自分のレーベルを主宰させてもらっています。Eve、マカロニえんぴつは社内全体を巻き込んでやるスタンス、「VIA」の方はもう少し自分主導で自由にできる環境で、2軸ですね。これもコロナ禍に繋がってくるんですが、大変な時だからこそチーム制で集まってやれる環境を作りたいというのがVIAを立ち上げた狙いとしてありました。

―2020年11月、まさに立ち上げの時期が、コロナ禍でした。気づけば今はみんなストリーミングで音楽を楽しむのが、当たり前のカルチャーになってますよね。立ち上げてみて想定内だったこと、想定外だったことってどんなことがありますか。

想定内なことは続いてるってことぐらいで(笑)。主宰レーベルを会社に通すためのプレゼン資料にも、目標は「続けること」と書いてました。このことだけはずっと言ってたんです。社内レーベルって、最初の打ち出しは派手なんですが、気づいたらなくなっているレーベルが多い。最初から大きく打ち出すというよりは、地道に続けて、いつかトイズファクトリーのストリーミング・サブスクライン=VIAになると、面白くなると思いました。想定外なことは、まだ一般層にまでリーチできていないこと。素晴らしいアーティストに所属してもらっているので、もっと自分が頑張らないといけません。

―withコロナでのレーベル立ち上げだったわけですけど、今アフターコロナになりつつある中での影響はどのように感じていますか。

最近ライブで声出しができるようになって、ストリーミングもライブの数と比例して数字を伸ばしてきてます。音楽をエンターテイメントとして好きになり始めてる中学生、高校生からすると、新しい体験が今スタートしているように見えます。ライブ体験の後に曲を改めて聴くことで新しい発見や気付きがあったり、音楽の伝わる深度が変わってきてます。マカロニえんぴつの「なんでもないよ、」はコロナ禍にストリーミングでヒットしたんですけど、お客さんも基本的には「静かに聞く曲」と認識していたと思います。しかし、今ライブで声出しがOKになって、最後の“ららら”というフレーズをお客さんと一緒に歌って、新しい景色がそこにはあって、ライブきっかけで変わっていくんだなと痛感しました。

―確かに声出しライブが戻ってきて、本当に戻ってきた感って如実にありますよね。

顔出しをしていないネットのアーティストをたくさん担当させてもらっているんですが、ライブをやってこなかったアーティストも「何かやりたいです」と言ってくれたり。今までTikTokとかYouTube、SNSを中心に音楽を発信していたけど、フィジカルライブの良さを改めて実感している気がします。

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