花冷え。が語る、突然変異型メタルコアの裏側、「やったるぞ!」精神

花冷え。:左からチカ(Dr)、ユキナ(Vo)、ヘッツ(Ba&Cho)、マツリ(Gt&Vo)

花冷え。のメジャーデビューアルバム『来世は偉人!』が完成した。バンドの存在はRSJでもお馴染みのライターDA氏に2021年8月に教えてもらったが、驚いたのは今年1月に突如発表した「お先に失礼します。」だ。

【動画を見る】「お先に失礼します。」ミュージックビデオ

この曲のミュージックビデオは海外のメタルシーンでも話題となり、現在までに360万回以上の再生回数を記録。コメント欄も海外からのものが圧倒的に多い。そしてさらにビックリしたのが、彼女たちがメジャーレーベルと契約してアルバムをリリースし、その後ヨーロッパ~アメリカと海外ツアーをするというニュース。2023年に入って怒濤の展開なのだが、アルバムを聴くとその騒がれっぷりもよく分かる。メタルコア、パンク、ボカロ、ラップ、J-POPなどが凝縮された超ミクスチャー・サウンドというか、ユキナ(Vo)のデスボイスとマツリ(Gt&Vo)の歌というツインボーカル編成が強力だし、ヘッツ(Ba&Cho)の味のあるボーカルもスパイスになっていて、ボーカルからも演奏からも「バンドを全力で楽しむぞ!」「舐めんな!」という気概が感じられるし、媚びのようなものが一切ない。チカ(Dr)は今年加入のメンバーだが、残りの3人は中学~高校の同級生で、ライブハウスや軽音部で同じ時間を過ごしてきたバンドマンだ。彼女たちが培ってきたタフさや積み重ねてきたエモさが、血となってそれぞれの曲に流れている。



今回のインタビュー後、名古屋ell.FITS ALLのワンマンツアーに足を運んだのだが、「新曲もライブを通して皆で作っていく」というユキナ(Vo)のMCが示していたように、アルバムに収録された曲もリリース前なのに出し惜しみなくガンガン披露。「TOUSOU」のウォール・オブ・デス、「Today's Good Day & So Epic」のサークルピットなど、ライブハウスという空間でしか味わえない熱狂と歓喜が、バンドとオーディエンスによって自然と生み出されていた。会話ではなく、音楽を通してのコミュニケーション。海外ツアーも彼女たちならブチかましてきてくれることだろう。

—ソニー・ミュージックレーベルズのエピック・レコード・ジャパンからリリースされる『来世は偉人!』。大舞台で迎えるメジャー一発目の作品ですが、メジャーの実感はどうです?

マツリ:最初は実感が湧かなかったんですけど、このアルバムを完成させていく過程でじわじわと「ああ、メジャーデビューするんだな」って感じはじめて。ただ、やりたいこととか方向性は全く変えずに、環境だけ、新たなところで再出発するって気持ちです。

ヘッツ:自分たちがインディーズでやってた頃にはできなかったことができるようになったことが、大きな変化かなって思います。以前はSNSの運用とか、お客さんに知ってもらうという点に関しては力不足だったんですけど、メジャーで大きく動いてもらえるようになるとそれだけ知ってもらえる人数も増えるので、よかったなと思います。

—チカさんは今年5月に加入していきなりメジャーデビューする形になりましたが、どうですか?

チカ:花冷え。に入る前は、小さいライブハウスでのライブ活動しかしてこなかったので、いきなりステージが大きくなって「あわわわわ」って感じです。全部が新しいのでメジャーデビューの実感はあんまりないですね。今のところは。

—静岡の音楽専門学校を出た後はドラムを教えてたとか。

チカ:講師もちょっとだけやってました。

—教え子たちも喜んでくれてるんじゃないですか?

チカ:すごく喜んでくれて、花冷え。のことも応援してくれてます。

—ユキナさんはどうですか?

ユキナ:最初は実感がわかなかったんですけど、SATANIC CARNIVALでメジャーデビューの発表をさせていただいて以降、高校時代の友達や知り合いから「すごいね」って連絡がきて。学生の時からずっとバンドをやってたので、続けてるのを見てくれてたんだ、ってうれしかったです。何年も連絡を取ってない小学校の友達から「ニュース見たよ」っていきなり連絡が来たり。それで、メジャーデビューするとこうやってライブハウスにいない人にも届くようになるんだと思って、そういう面でも実感しました。

—ずっとバンドをやってたとのことですが、結成は2015年だからバンド活動歴も長いんですよね。

マツリ:そうですね。今年で8周年になりました。

—海外のバンドだとU2もメンバー4人が同級生だったり、日本だとRADWIMPSの野田(洋次郎)さんと桑原(彰)さんが高校の同級生だったり。そういう同級生ならではのヴァイブスがあると、バンドの一体感やムードも自然と形成されていく気がしていて。花冷え。の音楽にも、時間をかけて築いてきたバンドのパワーみたいなのがある気がします。今回のアルバムには、どんなテーマや狙いがあったんでしょうか?

マツリ:基本的に歌詞より先に作曲をするんですけど、デモができたらとりあえずメンバーに送るんですね。私の中で今回はピコピコ感だったりキラキラ感だったり、華やかな感じにしようと思って作ってて、デモの段階からキラキラしたシンセとかを入れてたんです。それを聴いてもらった上で他のメンバーと「宇宙をテーマにしよう」って話になって。今年はアメリカとヨーロッパのツアーに行くので、日本から海外を越えて宇宙まで、花冷え。の楽曲を届けるぞってことで、宇宙をテーマにして。全体的にコンセプト・アルバムっぽく作りました。

—曲名も「超次元ギャラクシー」ですからね。

マツリ:1曲目「Blast Off」、2曲目「超次元ギャラクシー」はセットのイメージで作ったんですけど、この1〜2曲目がまさに宇宙をテーマにしていて。「宇宙まで花冷え。の楽曲を届けるぞ」っていうのがストレートに歌詞に書いてあります。一方で「今年こそギャル〜初夏ver.〜」や「Warning!!」は、やりたいことをてんこ盛りで入れた曲です。





ユキナ:歌詞で言ったら「Tales of Villain」。「Villain」って悪役って意味じゃないですか。悪役にスポットをあてた曲を書きたいねってずっとマツリと言ってて。今回は今流行りの、某夢の国の某海の魔女をイメージして……。

マツリ:今、まさに映画が公開されている……。

ユキナ:そのヴィランの話なんですけど、他に10曲目の「Today's Good Day & So Epic」も、このアルバムじゃないと出せなかったような曲ですね。ストレートに等身大の自分たちを書きました。

—宇宙っていう大筋のコンセプトはありつつも、自由にやりたいことをやってる。

マツリ:そうですね。歌詞は自由にやってます。

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