BABYMETALとブリング・ミー・ザ・ホライズンが語る先駆者の哲学「音楽に正解はない」

左から、リー・マリア(Gt)、マット・キーン(Ba)、マット・ニコルス(Dr)、オリヴァー・サイクス(Vo)、MOAMETAL(Scream & Dance)、SU-METAL(Vocal & Dance)、ジョーダン・フィッシュ(Key)(Photo by OGATA)

日本発のBABYMETALと英国シェフィールド発のブリング・ミー・ザ・ホライズン。両者ともにメタルの遺伝子を持ち、唯一無二のセンスとアプローチで進化を遂げてきた世界的バンドだ。

8月のサマーソニックで両者のライブを観て感じたのは、いずれも有機体のように姿や形を変えていく音楽だなということと、ステージ上のクリエイティヴとコミュニケーションを大切にしているなということだった。2004年結成のブリング・ミー・ザ・ホライズンは前作『ザッツ・ザ・スピリット』(2015年)と今年リリースした最新アルバム『アモ』をセルフプロデュースで制作しており、これまで以上に自分たちの表現を深め、そして広げているモード。SU-METAL(Vocal & Dance)、MOAMETAL(Scream & Dance)の布陣で10月11日に3rdアルバム『METAL GALAXY』をリリースするBABYMETALも同作で新たなレベルに到達。彼女たちを支えるチームととともに、メタルの世界にまた新たな革命の風を吹かせることだろう。

今回、そんな両者のスペシャル・インタビューが実現。ブリング・ミー・ザ・ホライズンのオリヴァー・サイクス(Vo)とジョーダン・フィッシュ(Key)、BABYMETALのSU-METAL、MOAMETALが応じてくれた。

ーお互いの存在を知ったのはいつ頃で、何がきっかけだったんですか?

ジョーダン 初めて僕らが会ったのは、ダウンロード・フェスティバルじゃないかな。リンキン・パークと一緒に出た時の(編註:リンキンとブリング・ミーが出演したのは2014年だが、この年にBABYMETALは出ていない)。とにかくフェスで会ったのが最初かなぁ。記憶が曖昧で……。

オリヴァー だいぶ前だよね。

MOAMETAL 私たちは2016年のKERRANG! AWARDS(英国のケラング!誌による音楽賞)の授賞式だと思ってました。

SU-METAL うん。

オリヴァー&ジョーダン あー! そうだそうだ!

ー最初にBABYMETALの存在、音楽を初めて知って聴いた時、どういう印象を受けましたか?

オリヴァー クレイジーだなって。

SU-METAL&MOAMETAL (笑)。

オリヴァー それにとてもカッコいいと思った。世界中にBABYMETALのようなバンドは他にいないし、世界中のどのバンドともかなり違うことをやっている。初めて聴いた時にすごく興味深いと思ったよ。単にメタル・シーンにいるバンドとは異なるサウンドとルックスで、楽しさが前面に出ていてクレイジーだったから。そこに多くの人が魅了されているんだろうし、人々をエキサイトさせて巻き込んでいるんじゃないかな。メタル・シーンって時にはシリアスになりがちで、メタルと異なるタイプのサウンドとのコラボレーションを目にすることって少ないと思うんだ。BABYMETALはジャパニーズ・ポップとメタルの融合って感じでとてもクールだよ。

ジョーダン 僕たちは自らをとりわけシリアスに捉えるようなことはしないし、異なるスタイルを持ち込むことを恐れない。だからBABYMETALが現れた時にはなんていうか、僕らと同じようなヴァイブを感じたんだ。音楽性はまったく異なるけどね。

オリヴァー ブリング・ミー・ザ・ホライズンよりもシアトリカルだよね。BABYMETALがギグというよりかは、いかにしてショウとしてステージを成立させているかという部分に僕らはインスパイアされたし参考にしたよ。単なるロック・バンドとかメタル・バンドとかっていう見方ではなく、ビッグなショウにおけるパフォーマンスについて考えた時、BABYMETALから刺激を受けた部分は確実にある。

SU-METAL ありがとうございます。他のアーティストの方からBABYMETALの感想を聞く機会があまりないので、目の前でそのように言っていただいて新鮮ですし、ちょっと恥ずかしさもあります……。でも、素直にうれしいです。

MOAMETAL 私自身、BABYMETALを始めるまでメタルというものに触れて来なかったので、BABYMETALを通していろんなメタルを知ったんですけど、ブリング・ミー・ザ・ホライズンは本当に大きな存在です。出会えて良かったと心の底から思います。

SU-METAL ちょうどブリング・ミー・ザ・ホライズンと出会った頃と同時期に、メタルの音楽がこれまで以上に面白くなってきて、私たちにとってはメタルの可能性を広げてくれたきっかけのような存在です。

MOAMETAL メタリカさんのような伝統的なメタルの良さもある一方で、ブリング・ミー・ザ・ホライズンのような曲を聴いて、メタルはこういうこともできるんだと思いました。



ージョーダンは最新作『アモ』に関する取材で「モチベーションは自分たちへのチャレンジ」と語っていましたが、SU-METALさんも最近のインタビューで「挑戦」という言葉を使っていましたよね。現状に甘んじず、何かに挑み続ける。その高みを目指すスタンスは昔からあったものですか? それとも活動を続ける中で自然と出てきたものですか?

SU-METAL そもそも私たちが(BABYMETALを)結成した当時から、「これはメタルじゃない」っていう批判的な声をいただくこともあって、最初からある意味挑戦だったと思うんです。常に高いハードルが用意されていた気がしますし、それを乗り越えてきたからこそ「BABYMETAL=KAWAII METAL」というスタイルが定着したと思いますが、今度はそれを自ら壊していかなきゃならない……。それもまた挑戦ですし、私たち自身がずっと何かに挑み続けているという認識です。

オリヴァー 僕らもほぼ同じだね。バンドとして、人として、その両方に言えると思うんだけど、自分たちらしさをはっきりと表明することは、世界中から批判されるかもしれない……といった類の恐怖よりも尊いことなんじゃないかな。誰からも指図されることなく、自分たちは挑戦ができるんだ。それに対して賛否両論あってもいいだろうけど、決めるのは僕らだからね。僕らはステージでの自分たちと実生活の自分たちを分けて過ごしたい。だからアーティストとして他人にどう思われるかということを気にしすぎずに自分の音楽を作りたいんだ。去年と比べても僕らはかなり変わった。作品を重ねるごとに自分たちらしさを表現できていることに、自信を感じているよ。ファンに喜んでもらえることだけを考えるような道もあるけど、その場合は僕らがやりたいこととのバランスを取る必要もある。

 僕らが作りたい音楽を作ったことによって誰かが困惑したり、僕らがよりポップな音楽を作ったことを理由に誰かがセルアウトしたとか言ったとしても、僕らはそれらに対する返答を持ち合わせていないよ。だって単に作りたいものを作ったにすぎないのだし、10年前にはできなかったことができるようになったりして、来るべき時が来たという感じでしかない。音楽はステートメントのようなもので、人はいつだって変われるし、新たに一から仕切り直すことだって、元に戻すことだってできる。もっと自由に、もっと楽しむべきなんだ。

ジョーダン ここ数年を客観的に振り返ってみて、僕らは大きな批判を受けたよ。感覚的には過去最悪なレベルでね。僕らが望んでいたような声もあれば、分裂的なものもあった。でも、半数の人が愛してくれたってことに誇りを持っているし、残りの半数の人が気に入らなかっただけのことだよ。批判があることで僕らは強くなれるし、よりクリエイティヴに、より自由になれるんだ。そして次のステップへ向かうことができる。

オリヴァー 僕らがこの先も自分たちらしさを感じるためにやることは、僕らが愛するものを送り出すこと。過去の自分たちの音楽を振り返ると、僕らは常に夢中に取り組んで成長してきた。その時にやっていたことは間違いなく自分のやりたかったことだ。でも、5年前にやっていたことを今の僕は理解できない。好きじゃないというわけではないよ。同じ場所には戻らないってことさ。

ジョーダン 僕も同感だよ。

オリヴァー 消え去っていったバンドの多くは、自分たちのやりたいことをやってみたら受け入れられず、それだったら世間が好むことをやろうと過去の焼き直しを試みたりしたんじゃないかなと思う。だから、やりたいことをやるっていうのはバンドを長く続ける上でも重要なことなんだ。

MOAMETAL 私たちも批判を覚悟した上でこれまで活動してきて、新しいアルバム(『METAL GALAXY』)に対しても「これはBABYMETALじゃない」「メタルじゃない」っていう意見があるかもしれないと思っていて。でも、今お話しされていたことを聞いて、私たちとブリング・ミー・ザ・ホライズンに共通点を見つけることができて良かったです。

SU-METAL すごく共感できるポイントがたくさんありました。音楽って正解はないと思いますし、さっきオリヴァーさんが言っていた通り、表現って自由じゃないですか。今回のアルバムに関しても本当にチャレンジしているんですけど、次はそれをまた壊して進化していかなければならない。でもそうやって面白い音楽がどんどん生まれて来ると思うんです。だから正解を見つけたり縛り付けたりするのではなく、BABYMETALとしてもいろんな表現方法を試していきたいです。逆にファンの方から見た時に、この曲は好きだけどこの曲はあまり好きじゃない……という意見はあって当然のことだと思うので、そういう風に盛り上がるのはいいことだと思います。


Translated by Aya Miyahara

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