追悼シネイド・オコナー 不条理な世界と闘ってきたシンガーの必聴10曲

1990年、世界的スーパースターとなった当時のシネイド・オコナー(Photo by ALAIN BENAINOUS/GAMMA-RAPHO/GETTY IMAGES)

シネイド・オコナー(Sinead O'Connor)はスタートからいきなり激しく燃え盛った。「自分の感情を表に出さないのがどんなに危険かを示すいい証拠が私かもね」と、ローリングストーン誌のマイカル・ギルモア記者に語ったのが1999年。この年、記憶に残る声を持つアイルランド人シンガーはセカンドアルバム『蒼い囁き』で国際的スーパースターになった。当時収録された楽曲は今もエネルギーに溢れ、56歳という若さで他界した今だからこそなお活き活きとして聞こえる。

彼女の過去の作品を掘り返せば、ヒット曲以外にも胸を打つパフォーマンスはまだまだ見つかるだろう。「長い間、自分の気持ちを表現できずにいた」と、先のインタビューで本人はこう続けた。「だから音楽が支えになったのね。音楽が何よりも強力なツールである理由もそこだと思う。誰かが表現したくてもできない感情を表現することができるから。激しさであれ、愛おしさであれ、感情を表現できずにいるときっといつか爆発する」。

「Nothing Compares 2 U」(1990年)



「私の中では、これは私の曲よ」とかつてオコナーは言った――彼女は正しかった。おそらく「Nothing Compares 2 U」は、プリンス以外のアーティストがプリンスの楽曲をオリジナルよりも見事に歌い上げた唯一の例だろう。史上最高の傷心バラードに、オコナーは一生分の苦悩を詰め込んだ。繊細な囁き声から一気に歌い上げ、アイルランドのブルーアイド・ソウルとしてはヴァン・モリソン以来の最高傑作。間違いなくキャリアを決定づける出世作だ。何もない黒をバックに、母親との辛い思い出を思い浮かべながら本当に涙をこぼすオコナーへカメラがズームしていくミュージックビデオもまた圧巻。-B.H.

Translated by Akiko Kato

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