U2最新インタビュー 「再解釈」アルバムの内幕、ウクライナでの経験、次回作のプラン

U2のジ・エッジとボノ、2017年撮影(Photo by Mike Coppola/Getty Images)

 
U2のギタリスト、ジ・エッジの最新インタビュー。過去の作品を再構築したニューアルバム、ラスベガスでのショー、ギターを中心とした次回作のプラン、ラリー・マレン・ジュニアの代理ドラマーなどについて、米ローリングストーン誌に語った。

U2のニューアルバム『Songs of Surrender』の終盤、1980年の大ヒットシングル「I Will Follow」の聴き慣れたコード進行のイントロが流れる。しかしそこにはドラムもベースもエレキギターもない。そして22歳の若者ではなく、62歳の目線で焼き直した新たな歌詞でボノが歌い出す。

“僕は外側にいた/あなたが僕を必要だと言った時”とボノは歌う。“鏡に映るのは僕が決してなれなかった少年/少年は大人になろうともがく/母親はそんな彼の手を離す/悲しみという贈り物が声に命を吹き込む/あなたが去ってしまうなら/僕はついて行こう”



U2は、「With or Without You」や「Pride (In the Name of Love)」等のメガヒット作品だけでなく、「Stories for Boys」「Red Hill Mining Town」「If God Will Send His Angels」といった隠れ名曲を含む過去の40曲を大胆に再アレンジし、時には装飾を削ぎ落として『Songs of Surrender』に収録した。ボノの回想録『Surrender: 40 Songs, One Stor』と緩やかにつながっている本作は、ギタリストのジ・エッジによる発案で、コロナのパンデミック中に、ブライアン・イーノ、ダニエル・ラノワ、ボブ・エズリンといった従来のコラボレーターやバンドのメンバーと、密かに作業を進めていた。

ジ・エッジは、カリフォルニア州マリブにある自宅で、ローリングストーン誌とのオンライン・インタビューに応じた。ニューアルバム『Songs of Surrender』の制作状況、ラスベガスのMSGスフィアで予定されている長期間のレジデンシーコンサート、背中を痛めているラリー・マレン・ジュニアの代役を務めるオランダ人ドラマーのブラム・ファン・デン・ベルフ、ギターを中心とした次のアルバム、2022年にウクライナの首都キーウで行ったアコースティック・ライブ、コンサートチケットのプライスポイントや入手性に関する厄介な問題、アルバム『Pop』のボックスセット、U2の伝記映画の将来的な可能性などについて語ってくれた。


ジ・エッジ、2017年撮影(Photo by TAYLOR HILL/FILMMAGIC/GETTY IMAGES)


―ニューアルバム『Songs of Surrender』を制作するきっかけは何だったでしょうか?

ジ・エッジ:ひとつのアイディアとして、しばらく前から考えていた。ロックダウンがきっかけになったと思う。それにボノが、各章に僕らの曲のタイトルを付けた本の出版を企画していたのも知っていたしね。「今しかない」という感じだった。上手く行かなければリリースしなければいいだけだし、誰もプロジェクトの存在を知らなかったからね。レコードレーベルに急かされていた訳でもないし、自分のため、ファンのために進めたプロジェクトだった。

それから、初期の作品を作った頃の僕たちはまだ未熟だった、ということも実感できた。ボノもシンガーとして、地に足が着いていなかった。クラブでは盛り上がったかもしれないが、どうせ客の半分はステージに注目していなかったし、当時の僕らのレベルからすると、少々分不相応な会場で演奏していたかもしれない。ボノが歌うメロディも、彼の声域の一番高いところ、つまり最も力の入る音域を懸命に使おうとしていた。

「歳を重ねたことでボノの声も成熟したし、シンガーとしての声の出し方や表現力も、当時より格段に改善されている。だから昔の曲を焼き直してみる価値はあるんじゃないか?」と考えたのさ。

これまでに何曲か試してみて、「Staring at the Sun」や最近の「Every Breaking Wave」のように、余分なものを削ぎ落として上手くいったパターンもあった。「埋もれた作品やヒット曲をさらに多く織り交ぜて、当時とは違った形で作り直したらどうだろう?」と検討してみた。

ピアノやアコースティックギターでじっくり時間をかけて検討しているうちに、それぞれの曲の雰囲気が固まっていった。僕もボノと声域は似通っているから、まずは自分で歌ったバージョンをボノに聴かせた。最初のセッションでボノが歌ってみると、「いい感じじゃないか。何だか行けそうだ」となった。

ボノも僕らも、カジュアルな感じのレコーディング方法が好みだ。僕らは普通の家の一室に、レコーディングできる環境を作った。正式なスタジオ設備ではない。「ここなら何かが生まれそうだ」という感じで、新鮮で説得力のあるボーカル・パフォーマンスのアイディアがいろいろ出てきた。僕もどんどんのめり込んでいって、気づいたらアレンジが50種類もできていた(笑)。だから、少々こだわった仕上がりになっている。

Translated by Smokva Tokyo

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