Awich、日本のヒップホップ史に残したマイルストーン 渡辺志保が考察

「Awich Queendom -THE UNION- at K-Arena Yokohama」

約1万8000人の観客を魅了したAwichのアリーナ単独公演「Awich Queendom -THE UNION- at K-Arena Yokohama」。自身最大規模となるライブには、ルーツとなる沖縄への愛情や日本のヒップホップ・シーンにおける連帯など、メッセージ性に溢れた内容に。豪華なゲストたちもさることながら、Awichが持ち得る最大のエネルギーを出し切り喜怒哀楽に溢れた感動のライブとなった。3時間に迫る圧巻の内容をレポートする。

【写真まとめ】Awich Queendom -THE UNION- at K-Arena Yokohama

2022年に初の武道館公演を成功させたあと、「次はアリーナ」と早々にその目標をファンたちに伝えてきたAwich。今年の5月には「THE ROAD TO ARENA」と題して全国五か所のZEPP会場を巡るツアーを敢行し、その傍らで故郷・沖縄のラッパーたちを集めた『098RADIO vol.1 Hosted by Awich』や、気鋭の国内女性ラッパーたちが参加した『United Queens』といったコンピレーション作品も続けてリリースし、かつ、TV番組にも意欲的に出演するなど、猛スピードでアリーナ公演への階段を駆け上っていった。前作『Queendom』リリース時から、果敢に「シーンに君臨する女王として何ができるか、どう動くべきか」という点に拘って活動を続けてきたAwichの、一つの到達点が今回のアリーナ公演といえるだろう。Kアリーナ横浜には、Awichのような髪型、メイク、ネイルを施した女性が溢れかえっていた。この一人一人が、Awichの言葉にパワーをもらい、日々の活力にしてきたのだと考えると、こちらも感慨深い気持ちになる。上演前の会場アナウンスはAwichの愛娘であるToyomi(Yomi Jah)が担当し、ライブが始まる前から客席が沸いた。早くも、Awichの演出にしてやられた、と感じた。

いよいよ、伝説が始まる。ステージには静かにスポットライトが当たり、美しい民族衣装を来た琉球舞踊団が登場し、「THE UNION」のコーラスにも参加したKUNIKOによる三線の音色と琉歌が響きわたる。なんとも厳かで神聖な雰囲気に、一気に会場が呑まれていく。Awichが繋いできた沖縄の壮大な歴史とアートが、このアリーナの舞台で再現される演出は、『THE UNION』を謳う今回のライブには打ってつけのオープニングだ。そのままライブの一曲目、「THE UNION」へと繋がり、歌詞中の”叫んでよAwich!”というフレーズをスピットすると、観客席からアリーナが揺れそうなくらいの歓声が沸いた。1万8000人の観客が、この瞬間を待っていたーーそう実感した。今回のテーマになっているものは、彼女の最新アルバムのタイトルにもあるとおり、”UNION=団結、融合”。彼女自身も、ステージ上のMCでは幾度となく「一体感」と口にしていた姿が印象的だった。この日のステージに集結したアーティストは、総勢20組を超える。国内のヒップホップ・アーティストに関しても、単独でアリーナ公演を成功させたものは数少ない。次々とステージへ現れるラッパーたちからもまた、この日のアリーナ公演を歴史的なものにすべく並々ならぬエネルギーを感じた。




Photo by Uran




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