Ken Yokoyama、大いに語る 「普遍的なこと」を歌うようになった理由

パンクの新しい形を提示できてる

―Minamiさんは横山さんから最初に歌詞を受け取る人ですけど、そういう変化みたいなものは感じていたんですか。

Minami 前から徐々にシフトしていくのは感じてたから、今回のシングルで改めて感じることはなかったかな。

―いつ頃から感じてたんですか?

Minami 『4Wheels 9Lives』ぐらいかなあ。たとえば、「While I’m Still Around」みたいな曲を書くようになってから、「まあ、そうだよなあ」って。こういう言い方しちゃうとアレかもしれないけど、 さっき話したみたいに「何を書けばいいかわかんない」って悩んだ結果としてそっちに行ったとするなら、「いいとこ見つけたね」っていうか(笑)。「おお、いいねえ!」って。



KEN へぇ~。

Minami まだ上の世代のバンドはいるけど、俺たちってこの界隈ではベテランの域に入っちゃってるじゃない? でも、こういう歌詞ってKENさんにしか書けないし、お客さんも一緒に歳を取ってきてるから、きっと共感してもらえるところがあるはずだと思う。

KEN もしかしたら、ライブの風景が俺にそういう歌詞を書かせてくれてるところもあるかもしれない。だってさ、ハイスタとかKEMURIとかに熱狂してた10代が今やもう40代なわけで(笑)。でも彼らは未だにライブに来てくれるし、なんなら子供も連れてきてくれるわけ……まあ、20代女性がスコーンと抜けてるんだけどね(笑)。求む、20代女性! とにかく、そういったライブでの風景がこういう方向に向かわせてくれてるっていうのはある。

―じゃあ、仮にKEN BANDのライブの最前列にいるのが20代女性だとしたら、生まれてくる歌詞の内容も変わってた可能性があると。

KEN そうだね、「Cute Girls」みたいな曲を延々書いてるだろうね。<お前の胸の谷間が>つって。

―あはは! でも、興味深い話ですね。Minamiさんが言ってたように、KEN BANDよりも上の世代のバンドはいっぱいいるけど、第一線に立って積極的に新曲をつくってフル回転で活動しているパンクバンドっていないじゃないですか。そういうバンドがこういう歌詞を書くっていうのは我々リスナーにとって未知の領域というか、初めて味わう感覚なんですよね。

KEN そう、誤解や批判を恐れずに言うと、パンクの新しい形を提示できてるなっていう気はする。やっぱね、50にもなって「アナーキー!」って言ってるのはただの借り物でしかないと思うのね。俺にとってのパンクロックって自分の経験とか感じていることをストレートに出すものだし、歳を重ねた分だけパンクロックの新しい可能性を見せられてんのかなって気はする。俺、間違っても「パンクだったらこういうこと歌わなきゃ」と思って歌詞は書かないから。

―横山さんはそうですよね。

KEN 真似したくないのよ。もちろん、憧れから入ってるから最初は真似から入るけれども、いつまでもそれしかできないようじゃ、それってコスプレに近いんじゃないかなっていう気がしちゃう。

―ファンの中には、歳を重ねたことで「もうパンクなんていいや」って離れた人はたくさんいると思うんですけど、歳を取った今だからこそ響くパンクもあるよって言いたいです。

KEN パンクロックっていうとやっぱり、暴力性とか衝動ってイメージがすごく強いし元々そういうものだったから、「この年になってパンクもねえよな」って中身を見ずに思われちゃってると思うの。それはしょうがない。ただ、今の俺たちを見てもらって、パンクっていうのは若さとか衝動だけじゃなくて、意外と深いものなんだって捉えてもらえたら嬉しいな。

―うん、それはそう思います。さらに、「These Magic Words」は歌詞だけじゃなくて曲もいいんですよね。これ、敢えてシングルシリーズの最後にもってきました?

KEN はい!(笑)今回のシングルは来年出るアルバムからの先行シングルっていう意味合いが強くて、そのためにとっときました。

―やっぱり。すごくいい曲です。

KEN すごくいい曲だよね(笑)。

―ここまでくると不思議なんですよ。それこそ歳を重ねると新しい音楽を掘る気力ってなくなっていくし、でも新しいインプットがないと過去の手法に頼った曲作りになってしまいがちだと思うんですけど、今回もいつもの横山節はありつつ、過去の焼き直し感がないのがすごいと思っていて。

KEN インプットはすごいしてるのよ。聴いてるのは昔の音楽だけど、たとえ1000回聴いた音楽だとしても、1001回目に新しい発見があるかもしれないっていう気持ちなんだよね。これ、仰天エピソードなんだけど、俺、家でiTunesを24時間ずっと鳴らしてんのよ。

―えー!

KEN もちろん、ミュートすることはあるよ? でもずっと起動させてんの。で、パッと音を出したときにこれまで何度も聴いてきた曲が違った聞こえ方をするかもしれない、とかね。そういう衝撃を求めて、車に乗ってるときも家にいるときもほぼ音楽は切らさないね。家とは違う環境、違うタイミングで聴いたら何か得られるかもしれない、とかさ。それはもう、随分長いことやってるな。

―もう何年も。

KEN うん、何年も。新しい音楽から刺激を受けるってことはそうないんだけど、映画を観たりとか、とにかくインプットはしてるつもり。やっぱり、インプットなくしてアウトプットって絶対ないから。

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