韓国の謎多きサックス奏者、Kim Okiが明かすムーディーで柔らかい音色の秘密

愛と哀愁のディスコグラフィ

―僕はキムさんの音楽に切なさを感じるんですが、自分の音楽において切なさって大事だと思いますか?

KO:うーん、重要だと思っているわけではないんではないんですが、作るとどことなく哀しいものが出てきてしまうのはありますね。

―こうやって話していると、キムさんの人柄はカラッと明るいような感じがします。でも、奏でる音楽はどこか哀しい……。

KO:実は、子供のときに鬱だったことがあるんです。音楽をやっていくうちにだんだんなくなっていった部分があります。若い頃は小心者だったし、しゃべるのも苦手だった。でも、音楽をやることでそこが解消されたんですよね。

―キムさんにとって音楽とはどんなものなのでしょう。自分自身をケアするものだったり、気分を癒すものだったり、自分の中にあるものを吐き出すものだったりするのかなって。

KO:最初の頃のアルバムに関しては、一人で制作をしながら、自分自身を治癒するような意味合いもたしかにありました。その過程で自分の音楽を聴いてくれる人たちも出てきて、そこから僕の音楽によって慰められると言ってくれるような人たちも増えてきたんです。だから、その人たちに何か届けたいと思うようになりました。自己完結していたところから、お客さんとの関係がだんだん育まれてきて、今に至ります。



―今の話を聞いて、キムさんの曲のタイトルに「Love」という言葉がたくさん使われているのも納得しました。最後に、今回の来日と『LOVE JAPAN EDITION』を通じてキムさんの音楽に興味をもった人たちのために、ご自身のディスコグラフィの変遷を紹介してもらえますか?

KO:『fuckingmadness』(2017年)は RHファクター、つまりロイ・ハーグローヴに影響を受けています。『Public Domein For Me』(2018年)はバラード的な部分を聞いてくれる人のことを想定しながら作りました。




『Saturn Maditaion』』(2018年)にはサターンという言葉がついています。これはサン・ラーを意識したから。それこそ今のトリオのバンドもSaturn balladですしね。『Spirit Advance Unit』(2019年)には「Cotard's Syndrome」(コタール症候群:自分はもう死んでいると思い込む精神障害)が収録されています。僕は2年くらい会社員をやっていたんですけど、その時の経験が入っています。





『For My Angel』(2020年)は、とある追想です。『Yun Hyong-keun』(2020年)は韓国の有名な画家ユン・ヒョングンから、彼の展示とのコラボアルバムの提案をもらって作ったものです。彼の絵からインスパイアされた曲を収録しています。




『Everytime』(2021年)は自分に対して書く手紙みたいなニュアンスのアルバムです。あと、僕は最近映画を撮っているんですけど、そのうちフィルム・ノワールを撮りたいと思っていて。そのサントラを先に作ったのが『Strange, true beauty』(2021年)です。銃が出てきたりする映画のサントラですね。




『Greeting』(2022年)は会社員のみなさんが出勤退勤するときに聴く音楽を想定して作りました。『Love Flower』(2022年)は今付き合っている彼女のために作ったものです。最初の曲(「Shine Like a Sunlight」)は彼女の名前にちなんだ曲です。








キム・オキ
『LOVE JAPAN EDITION』
配信・DL:https://ssm.lnk.to/LoveJapanEdition
レコード:2024年5月15日リリース
https://bayonstand.stores.jp/items/65e73540508a10121a0908aa

Translated by Koki Yahata

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