MONOが「生と死」を語る 人生とバンドの残り時間、スティーヴ・アルビニへの惜別の思い

写真中央がスティーヴ・アルビニ、その右がTaka

MONOの通算12作目となる新作『OATH』がリリースされた。バンドの結成25周年を飾る節目の作品であると同時に、長年のコラボレーターであるエンジニア、故スティーヴ・アルビニと作った最後のオリジナル・アルバムでもある。「時間と人生」という壮大なテーマをこれまで以上にドラマティックに、エモーショナルに描ききったこの作品は、間違いなくMONOの代表作であり、長年海外を中心に着実に積み重ねてきた活動が大きく実を結んだ記念碑的な傑作となった。本作に込めた思いと情熱、そして故スティーヴ・アルビニへの惜別の思いを、リーダーのTakaが語る。


─通算12枚目となるアルバム『OATH』が発売されました。

Taka:とてもありがたいですね。どうやったら世界中でレコード店に並ぶんだろうかとか、ツアーができるんだろうとか、ずっとそればっかり考えてきたんで。当たり前のようで当たり前じゃない。こうしてコンスタントに12枚、きちんとレコード店に、世界中にあるっていうのはありがたいです。



─デビュー以来25年、MONOみたいな重厚な作風で12枚というのはかなり多作な方だと思います。

Taka:そうですね。理由は2つあって。インターネットがない頃からバンド始めてるんで、アルバムを出さないとツアーができないんですよ。アメリカだったら細かくやっても7週間。ヨーロッパだと2カ月を2回とかやっていくんですけど、それでも1年ワールドツアーやったら、次の作品が必要になる。じゃないとツアーができないから、バンドとして食べれない。そうやってずっとやってきたのが1つですね。

─なるほど。

Taka:あとは、一時期ほんとにベートーヴェンばっかり聞いた1年間があって。聴きすぎて聴くものがなくなったんですよ。その時にいっぱい作品があったらいいなと思ったんですよね。もっともっと聴きたいと思って。

─ベートーヴェンは作品が少ないから物足りないってことですか?

Taka:そうなんですよ。もっと聴きたいと思ったんです。もっと作品があったらいいなっていうファン心理です。だから僕らもいっぱい出した方がいいなと思ったんですよ。できるだけいっぱい出したい。

─なるほど。でもそんなに簡単に作れるもんでもないでしょう。

Taka:だからパンデミック前まではほんとに1回も休まずにツアー中でも書いてたし、飛行機の中でも書いてた。帰った日から作曲してたし。アルバムは2年おきですけど、ワールドツアーを1年、1年半とかやってるんで、その間に次のアルバムの曲を書く、ということをやってきました。


左上から時計回りにYoda(Gt)、Takaakira 'Taka' Goto(Gt)、Tamaki(Ba)、Dahm(Dr)

─Takaさんにとって、ライブをやることと作品を作ることはどっちが上にあるんですか。

Taka:ライブやりたかったんですよね。ライブ・バンドを作りたかった。世界で最も大きい音の4人組バンドを、インストゥルメンタルでやりたかったんですよ。マイ・ブラッディ・ヴァレンタインみたいなノイズをひたすら出したいという衝動から入って。ツアーをやるために同時に作曲も必要になってくるけど。今はアルバムもライブもひとくくりですけど。ライブをやるために音楽やってるんです。

─でも当然、作品が単なるライブのための予習教材じゃなく、作品として自立してなかったら意味がない。

Taka:アルバムにはオーケストラとか、自分の聞きたいものを入れていく。ロック・バンドなんだけど、アメリカ人もヨーロッパでも聴いたことがない世界を出す。その完成形がアルバムなんですよ。だけど、いつもオーケストラを持てるわけじゃない。4人でどうやってやるか。それをずっと20年以上追求してきてる感じです。今回のツアーは25周年のワールド・ツアーで、オーケストラを伴ってやる。それが僕の1番再現したいものなんですけど、だけど4人でやるオルタナな感じも大事で。もともと出がそこなんで、どっちも大事なんです。

─頭の中にある理想の曲のイメージ、音楽のイメージみたいなものに、いかに音源を近づけていくか。

Taka:そうです。マイ・ブラッディ・ヴァレンタインみたいなギターの音は絶対なんですけど、メロディはエンニオ・モリコーネみたいにしたいと思う。その2つを合わせてみたいというのが最初のアイディアで。マイ・ブラッディ・ヴァレンタインのノイズで映画のようなシネマティックな音楽をやったら。両方好きだったんで、どんな感動がするんだろうって作り始めた。それでああいう奏法になったんです。ストリングスの代わりに、ピアノの代わりに機械も使いながら。そういうスタイル作りの25年だった。

─つまり、今作はその集大成。

Taka:そうなんですよ。ほんとに。ほんとに。ほんとに。



─これアナログで聴いてて思ったんですけど、配信で聞くよりアナログで聴いた方が断然素晴らしいですね。音の厚みやスケールが全然違う。

Taka:それはもう絶対です。絶対です。いやほんと、全然違うんですよ。

─何が違うんでしょうか。

Taka:スティーヴ・アルビニさんの言葉で言うと、(デジタルの音は)「エイリアン・サウンド」。どっかから来たサウンド。エイリアンのサウンドとしか聞こえない。オーガニックじゃない、もう人間離れしてるってことを言ってましたけどね。

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