フェアーグラウンド・アトラクションが語る、再結成と36年ぶり新作で見つめ直した「絆」

フェアーグラウンド・アトラクション

 
6月末の来日公演で35年ぶりの活動を再開したフェアーグラウンド・アトラクション(Fairground Attraction)。看板歌手のエディ・リーダー、全曲の作詞作曲を手がけるマーク・ネヴィン、ドラムスのロイ・ドッズ、ギタロン(メキシコのアコースティック・ベース)のサイモン・エドワーズが再結集した日本ツアーのどの会場もぎっしり超満員となった5公演は、今年最高の心震わすライブ体験だった、と年半ばにして言い切ってもいいかもしれない。

そして、88年の名作アルバム『ファースト・キッス』(The First Of A Million Kisses)から36年、待ちに待ったニュー・アルバム『ビューティフル・ハプニング』(Beautiful Happening)がいよいよ9月20日に発売される。

来日時に行ったインタビューの公開済みの前編では、彼らの結成から解散までのいきさつとアルバム『ファースト・キッス』について話を聞いたが、この後編ではエディとマークが再結成とニュー・アルバムについて語ってくれる。

>>>前編はこちら
フェアーグラウンド・アトラクションが語る日本での再出発、名作の誕生秘話、解散の真相




友情を取り戻すまでの過程

―さて、今回グループが遂に再結成されたわけですが、大ヒット「パーフェクト」を改めて聞くと、第二連の歌詞がまるでそのいきさつを語っているようです。♪あの頃は若くて愚かで、間違いを起こした。そして今、それを正そうとしている、と。

エディ:ああ、まさにそうね。マークが書いた曲だから、彼がその意味するところを話してくれるわ。

マーク:ああ、確かに僕らは若くて愚かだったさ。でも、とても楽しんだよ。

エディ:ええ。そうでなくっちゃ。誰もが若いときは愚かなものね。今の私たちは歳をとっても未だに愚かだけど(笑)。私たちは過去を振り返らず、その瞬間を楽しむタイプの人間だし、どちらもこの人生の間にまた一緒にやるなんてまったく思っていなかった。でも、私たちも人生は短かいと感じる年齢になって、過去に敬意を払うようになった。

マーク:♪愚かなゲームに興じるには人生は短すぎる、だよ。

エディ:まさにそのとおりね(笑)。そういう意味では、あの歌は本当になったわね。自分たちがやったことに敬意を払いたかったし、お互いに対してそのことを伝えたかった。他の人たちからの賞賛や世間の評価とは関係なくね。重要なことは私たちが20代半ばから後半につながりを作ったこと。そのことは残りの人生にも良い影響を与えた。また一緒にやるようになったのは、それに敬意を払うことなの。


2024年6月27日、渋谷クラブクアトロにて(Photo by Masanori Doi)

―また集まることになった直接的なきっかけは何だったんですか?

エディ:2年前なんだけど、ロイがコロナに感染して、すごく病状が悪くなったの。私は仕事でロンドンに来ていたので、マークとサイモンに連絡をとって、何であれ、いまやってることを後回しにして、ロイのお見舞いに行こうと誘ったの。ロイが死にかけたほどだったとは知らなかったんだけど、彼は入院していて、私は恐ろしくなった。望んでも、もう一緒に演奏できなくなくなるかもしれないって。そして気づいたの。私にとって一番大事なことは、マーク、サイモン、ロイとの関係なんだと。そして、私たちは朝食に一緒に出かけ、とても楽しい時間を過ごした。そして何年ぶりか、マークの家族にも会った。何よりも重要なことは友情と人とのつながりなのね。

マーク:その一緒に朝食をとった日に思ったのは、どうして僕らは解散したんだろう?ということだった。まったく時間のギャップを感じなかったからね。

エディ:うん、時間のギャップなんてなかった。人と関係を持ってつながると、それは終わることはないわ。離婚しようが、何をしようが、その関係はずっと存在する。和解し、問題を解決し、感謝し、ありがたく思う。それが一番大事なことだし、そう感じている。マークにはありがとうと言わなくちゃ。私の人生に与えてくれたものを。

マーク:それはお互い様だよ。

―フェアーグラウンド・アトラクション解散後、マークはモリッシー、カースティ・マッコールなどのソングライティングのパートナーを務める一方で、自分のソロ・アルバムを発表してきました。解散後の初のプロジェクトだったブライアン・ケネディとのスウィートマウスのアルバムは、フェアーグラウンド・アトラクションの2作目に収録されるはずの曲が大半なんですって?

マーク:ああ、そうなるはずだった。




―ということは、エディの歌声のために書いた曲だったんですね。ブライアン・ケネディはとても女性的な歌声の歌手ですけれど……。

マーク:いや、僕は誰かの歌声のために曲を書いたりはしないよ。ただ曲を書くだけさ。

エディ:マッシュルームのようなものよね。突然そこに育っているのを見つけるの。

マーク:僕の場合は突然何曲も生まれる夜があるんだ。

エディ:マッシュルームが急成長するみたいに。

マーク:ああ。

エディ:私にはそんな夜はないわ。いいわね。

マーク:少し書き換えたところはあったかもしれないけど、ブライアンは僕らの良い友だちだったし、僕がエディと取り組んでいた曲を彼が歌うにあたって、そんなに問題はなかったと思うよ。

―バンドが解散して、歌手はソングライターを、ソングライターは歌手を失ったわけです。

マーク:当時重要だったことは、ある人が言ってたんだけど、人生の前半は自分の強みで働くんだけど、後半は弱みのうえに積み上げていくんだ。僕らが別れた後は、間違いなくどちらも自分の弱い部分を強くしていかなくちゃならなかった。

エディ:私はそうだったわ。間違いなく。

マーク:だから、今はまた強みに戻ってきたわけさ(笑)。

エディ:私たちの組み合わせには間違いなくシナジー効果があるわね。それも普通じゃなく、とてもユニークなものが。人生でそんな人に多くは出会えない。そんなに起こらないから、それが起こったときにはそれを認めなくちゃならないわ。そして大事にしなくちゃ。

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