Ken Yokoyamaが語る、90年代パンクの原風景「ライフスタイルの変化が鍵だった」

Ken Yokoyama:左から南英紀(Gt)、Jun Gray(Ba)、松本”EKKUN”英二(Dr)、横山健(Gt&Vo)

Ken Yokoyamaが初のパンクカバーアルバム『The Golden Age Of Punk Rock』をリリースする。横山健は90年代からカバーの名手として世界中から高い評価を受けていたが、今作はタイトルにあるように、パンクロックの黄金期――90年代の楽曲を中心にセレクトされた楽曲を、原曲のよさを損なわぬようにストレートにカバーしている。

【関連記事】「パンク」史上最高のアルバム40選

今回は、なぜこの曲が選ばれ、なぜこの曲やバンドは選ばれなかったのかという、多くのパンクリスナーが興味を持っているであろうポイントを中心に話を聞いた。そのほかにも、新たなパンクムーブメントの当事者として90年代を全力で駆け抜けた彼独自の視点から語られる、貴重なエピソードの数々を楽しんでもらえたらうれしい。



―一時期、パンクバンドがカバーアルバムをこぞって出していたことがありましたけど、だいたいがポップスだったり、ちょっと変化球気味な選曲が多くて、ストレートなパンクカバーのアルバムって意外とないんだなと思ったんです。

だって、原曲どおりにやるのって本当は意味のないことだからさ。バンドにとっては全然パンクじゃない曲をパンクアップしてアルバムに収録する、とかならオリジナル曲と近いものになるし、実際それがメインの手法なんだけど、今回俺たちがやったようなことってオリジナルアルバムに1曲入れてもあんまり意味のないことでさ。だから、やりづらいはやりづらいのよ。それをやる意味が見出せないというか。

―でも、今回は出せた。

うん。でもね、それをやるためには圧倒的な曲数が必要だった。2、3曲だと意味は見出せないけど、16曲にして1枚のアルバムにすることで大きな意味が出たって言えるんじゃないかな。

―でも、なんでこのタイミングだったんですか。もっと前でもよかったんじゃないかって。

確かに。(今作に封入されている)ライナーノーツにも書いたけど、具体的な引き金はTHE STAR CLUB『GOD SAVES THE PUNK ROCK』の存在を突然思い出したからなのよ。当時、あのアルバムはすごく目に留まったというか、存在感がよかったんだよな。



―純粋にそれが理由なんですね。

だから、思い出すのが5年早かったら5年前につくってたかもね……いや、でも、他にもいろんなタイミングとかいろんな辻褄が合ったからこそ今なんだろうな。

―俯瞰できるようになったとか?

うん、俯瞰できるようにはなったよ、年々。こういったタイプの音楽って、言葉で言ったらもう死語みたいなもんで、今は誰も聴いてないし、口にするのすらちょっと恥ずかしいみたいなところがあると思うんだわ。でも、俺はこの時代にどっぷりで、未だにこのアルバムに収録されてる時代の曲を毎日聴いてるわけよ。だけど、世の中がそうじゃないとなるとそれを紹介したい気持ちにもなるよね。もしかしたらまだこういう音楽を知らなくて、もし聴いてもらえたならそのうちの何人かはカッコいいって思ってくれたりするんじゃないかなと。

―だからこそ、これだけの時間が必要だったと。ライブにも若いお客さんが増えてるし、そういう顔を見ると、もしかしたら響くんじゃないかって。

そうね。だから、90’sパンクが地に落ちるのを待ってたのかな(笑)。

―でも、横山さんたちぐらいのキャリアになると、ある程度絞らないと選曲面で大変ですよね。

そうね。でもね、今回まだやりたい曲あったんだよ。

― それはそうでしょうね。だから、今作から漏れたバンドも興味深くて。最後までやるか迷った曲はあります?

あるよ、オフスプリングがやりたかった。でもね、キーが高すぎて、トライしたんだけどできなかったのよ。あと、ストラング・アウトもやりたかったし、グッド・リダンスもやりたかったし……いっぱいあるよ。

―テン・フット・ポールとかプロパガンディとか。

そうね、プロパガンディもアイデア出たなあ。

―レザーフェイスがいないのが意外でした。

でもね、レザーフェイスは90’sパンクって感じではないから。

―でも、そうじゃない曲は今作に入ってますよね?

89年とか2002年のものは入ってるけど、イメージ的に90’sパンクかなっていう曲だからさ。

―ああ、独自の枠組みがあるんですね。

そうそう。そこは主観でしかないんだけれども。たとえば、「Too Late」は89年の曲でさ、「International You Day」は2002年の曲なのよ。でも、その辺だったらいいでしょうっていう判断。

―レザーフェイスってそんなに古いんですか?

スナッフよりもちょい前だから、80’sの香りがすんのかな。

―スナッフと同じぐらいに存在を知ったから、てっきり同じ時期なのかと思ってました。

確かに。ほかにも何人かからなんでレザーフェイスを入れなかったのかって言われたよ。やりゃよかったかなって思う。Vol. 2つくるか(笑)。バンド内で意見が割れた曲もあったし。

―あったでしょうね。絶対ストレートに決まらなそう。

でもね、そこは聴く人を意識して、そのバンドのとっかかりになれるような曲をピックアップしたつもり。

―確かに、今作の収録曲をApple Musicで見てみたら、全部「トップソング」の1位か2位でした。

あ、本当?

―そう。個人的には「21st Digital Boy」が選ばれてるのが意外で、「いや、大好きだけども!」と思いながらApple Musicを見たら2位で。

マジで!? ちなみに、1位はなんだった?

―「American Jesus」。

ああ、そっか! それがあった! じゃあ、ALLはどうだった?

―「Crazy?」が1位ですよ。

マジで!? 本当!? へぇ~!

―だから、ライナーノーツで横山さんが書いてたテンションと世の中はちょっと違うんですよ。

そうなんだ。ALLは隠れた名曲をピックアップしたつもりだったんだけど……そうなんだ。すげえ。

Tag:

RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE