初めてのクラブ・ツアー、そして数々のオープニング・アクトを行った1976〜77年以降、トム・ペティ・アンド・ザ・ハートブレーカーズはアメリカの最も優れたライヴ・バンドのひとつとして走り続けてきた。ポップの要素を取り入れた、強烈なガレージ・ロックのモダニスト。いつだって『モジョ』のようなスタジオ・レコードを制作したいという情熱を持っていたはずだ。ひとつの部屋に全員が集まり、力を合わせ、一気に仕上げる。そんな勇気を奮い起こすまでにかかったのは、たったの34年——しかし、待つ甲斐はあった。
 ペティが狙ったわけではないことは確かだが、『モジョ』は、ザ・ローリング・ストーンズの『メイン・ストリートのならず者』が再リリースされた後という、絶妙のタイミングで発売された。この2作には多くの共通点がある。ダブルLPほどの長さと、どこかへ向かっているかのような動きのあるリリック。遠くから眺めると、それは作者にとって避難場所のようにも見える。“何かが傷ついているのが見える/嵐が過ぎ去っても、まだそこにある”。「ランニング・マン・バイブル」の滑るようなギターに乗せ、ペティは歌う。
 しかし『メイン・ストリートのならず者』と同じように、『モジョ』は、そのガヤガヤとした騒がしさや直感的なディテール、そして緩やかなコントロールでもって、どのような状況でも我々の心をわしづかみにする。プロトゥールズやオートチューンでは決してそのようなサウンドは得られない。世界で最もタフな聴衆のためにプレイする“バンド”が必要だ。

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