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エミネムがすべてをさらけ出す、新作『リバイバル』全曲解説

Elias Leight | 2018/01/04 17:00

| Photo by Craig McDean |

豪華ゲスト勢、トランプ非難、パーソナルなストーリー、そして強烈なライムの数々、リック・ルービンがプロデュースを手がけた、エミネムのニュー・アルバムを徹底解説する。

史上最も成功したラッパー、エミネムが4年ぶりとなる新作『リバイバル』を発表した。本作はヒップホップのみならず、ロック、ゴスペル、ポップなど、さまざまなスタイルを取り入れた全19曲で構成されている。クール、自己卑下、慕情、否定、殺人願望、政治観、好色、後悔など、彼の多様な面が反映された楽曲群の中には、それら全てが同居したようなトラックもある。リック・ルービンによる骨太なトラックや、長年にわたるパートナーのアレックス・ダ・キッドによるピアノバラードなどに合わせて彼がラップする本作には、フレッシャーのようなローカルのアーティストから、ビヨンセやピンク、アリシア・キーズ等の世界的スターまで、様々なゲストも参加している。エミネムは今作で、自身が今もこの世界の頂点に君臨していることを高々と宣言してみせる。“俺が没落する日/それは決してやってこない”。参加プロデューサーやソングライター、客演ゲスト、テーマなどを曲毎に紹介しながら、本作の魅力を掘り下げていく。

1.「ウォーク・オン・ウォーター」feat.ビヨンセ

2000年発表の『ザ・マーシャル・マザーズLP』は、「スリム・シェイディは世間の目など一切気にしない!」という、皮肉たっぷりのアナウンスで幕を開ける。同作はかつてのマーシャルのトレードマークだった、汚らわしさとダークなユーモアに満ちていた。しかし、現在のマーシャルのスタンスは大いに異なっている。以前の彼なら却下したであろう、物悲しいピアノとストレートなゴスペル調のビヨンセのコーラスがリードする『リバイバル』のオープニングトラック『ウォーク・オン・ウォーター』で、エミネムはストレートに問いかけてみせる。“何でこんなにもプレッシャーを感じるんだ? 俺が積み上げてきたキャリアのせいか?”

パンチラインを必要としないこのシリアスで危うい曲を支配するのは、夜が訪れるたびにラップ・ゴッドを襲う自分への懐疑心だ。近作に対する世間の批判が的を射ていることを、彼は重々自覚している。2番目のヴァースで、批評家たちからの評価と驚異的なセールスを同時に勝ち取った『ザ・マーシャル・マザーズLP』に言及する部分(“過去に俺のアルバムが生んだ記録、今じゃそれは呪いだ”)は、『リバイバル』の根幹をなすテーマを示している。“いつだって新記録を打ち立てる自信に満ちてる / でもカーステレオで曲を流した途端にそれは打ち砕かれる / クソみたいな曲だ、聴けたもんじゃねぇ”というリリックには、制作における彼のフラストレーションがにじみ出ている。

ビヨンセの気高くも穏やかなコーラスを擁する、リック・ルービン(とスカイラー・グレイ)がプロデュースしたトラックは、前作に収録されたランDMCやビースティーズ調のハードな「バザーク」よりも、むしろ彼がジョニー・キャッシュと作り上げたアルバムを思わせる。ムードに沿ったフロウを繰り出すマザーズのトーンは穏やかだ。

しかし曲が終わる間際に、エミネムは別の顔を見せる。“お前と一緒にするなクソ野郎 / 俺はあの「スタン」を書いたんだ”

2.「ビリーヴ」

トラップ風のスネアとミニマルなピアノがリードする今っぽいサウンドは、40代半ばを迎えた彼からの若いリスナーに対するアピールともとれる。エミネムはそのサウンドに見事に対処しながら、最初のヴァースでは「光」というポジティブな言葉を操ってみせる。曲の中盤には“最低賃金で必死に働いてた日々のことは今でも忘れない / 生活保護をもらってるやつなんてほとんどいない / 政府のサポートなんてまるで期待できない”という、自らの経験をもとに中西部の厳しい現実を描いたライムが登場する。その後に続く彼自身による印象的なコーラスは、「ザ・ウェイ・アイ・アム」や「クリーニング・アウト・マイ・クローゼット」を彷彿とさせる。また「ウォーク・オン・ウォーター」で取り上げたテーマはここでも登場し(“若かった頃は夢を追う喜びに満ちてた / でもレースの勝者となった今では、保身と情熱の維持に必死だ”)、再び走りだそうとする彼の決意が見てとれる。
Translated by Masaaki Yoshida

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