エミネムがすべてをさらけ出す、新作『リバイバル』全曲解説

Photo by Craig McDean


16.「ニード・ミー」feat. ピンク

エミネムがピンクとタッグを組むのはこれが2度目だ。彼女が2017年10月に発表したアルバム『ビューティフル・トラウマ』に収録された「リヴェンジ」のポップさとは対照的に、アレックス・ダ・キッドがプロデュースした「ニード・ミー」は、スペーシーなパーカッションが印象的なパワーバラードとなっている。ピンクによる2ヴァースとコーラスの後に、エミネムは長尺の強烈なライムを放つ。しかしこの曲で特筆すべき点は、彼が女性ヴォーカルをゲストに迎えた曲としては珍しいアプローチを試みていることだ。「ニード・ミー」の前半におけるピンクのセカンドヴァースに、エミネムはフェードインする形で自分の声を重ねていく。ワルツ調の揺らめくようなリズムが印象的なトラックに合わせて、マーシャルは不毛なロマンスについて歌ってみせる。“お前を運命の相手だと思ってた / でも俺たち釣り合ってないみたいだ / お前を見てると思い出す、俺の母親”

17.「イン・ユア・ヘッド」

「イン・ユア・ヘッド」のオープニング、そして全編に渡ってバックグラウンドで流れ続けるドロレス・オリオーダンのヴォーカルは、ザ・クランベリーズのヒット曲「ゾンビ」のサンプリングだ。このトラックを手掛けたニューヨークのMC/プロデューサーのスクラム・ジョーンズは、サンプリングによるトラック制作を得意とし、2000年代初期以降ジェイダキスやゴーストフェイス・キラー等に楽曲を提供しているが、エミネムとタッグを組むのは今回が初めてとなる。

エミネムはこの曲で、自身のキャリアを後悔の念とともに顧みている。“俺はとうの昔に引退すべきだったんだ / 『リカバリー』は俺を振り出し地点に戻しちまった / 人生の勝者となるはずだったのに、俺は『リラプス』(崩壊)寸前だ”

18.「キャッスル」 feat. スカイラー・グレイ

“私が築き上げたこの城で、私たちは玉座に縛られた囚われの身となった”。この曲のオープニングで、スカイラー・グレイはそう歌い上げる。鉛筆と紙の効果音を伴い、全ヴァースが手紙を読み上げる形で進むこの曲は、否が応にも「スタン」を連想させる。しかし大きな違いは、この手紙がマーシャルが娘のヘイリーに宛てたものであることだ。1通目は1995年の彼女の誕生から数週間後、2通目はその1年後、そして3通目は彼女の12歳の誕生日付けとなっている。3番目のヴァースのエンディングで、エミネムは2007年にメタドンのオーバードーズで生死の境をさまよった時のことを振り返る。“父さんの目の前にはロープがぶら下がってる / この人生を終わりにしたいんだ / 愛しい娘よさよなら、どうか元気で、父さんはもう眠ることにするよ / 父より愛を込めて…クソ、どうすりゃいいんだ”

19.「アローズ」

「アローズ」の冒頭を飾るループは、ベット・ミドラーが1979年に発表したアルバム『ザ・ローズ』(あるいは同名の映画)のタイトル曲のサンプリングだ。2007年に経験したオーバードーズについて言及する「キャッスル」のエンディングの続きとして綴られるこの曲で、彼は2006年にこの世を去った元D12のメンバーで盟友のプルーフ(その死は彼を“真っ二つに引き裂いた”)、そして自身の家族に語りかける。4分を過ぎたところで、エミネムは“テープを巻き戻す、間違いを正すために”と言い放ち、唐突に沈黙が訪れる。その直後に再び流れる『キャッスル』の3番目のヴァースには、異なるエンディングが用意されている。“誓うよ、もう俺にクスリは必要ない”。希望の光を灯すその言葉とともに、アルバムはメタドンをトイレに流す音で幕を閉じる。

Translated by Masaaki Yoshida

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