ポール・サイモン、隠れた名曲ベスト10

第3位 『犬を連れたルネとジョルジェット』
ドイツ人写真家のローター・ウオーレがダダイストのルネ・マグリットと妻のジョルジェットを撮影した2枚の有名な写真がある。『戦時中のジョルジェットと愛犬を抱いているルネ・マグリット』と『ジョルジェットと愛犬を抱いているルネ・マグリット』だ。1983年のアルバム『ハーツ・アンド・ボーンズ』(どういうわけか本誌読者にはこのアルバムが人気だ)で、ポール・サイモンはこの写真作品に一曲捧げている。そして歌の中で1950年代のザ・ムーングロウズ、ザ・オリオールズ、ザ・ファイヴ・サテンズといったポップス・グループの名前を挙げ、はるか昔を懐かしく振り返っている。サイモンは1984年の夏のツアー以降、この曲を一度も演奏していない。

第2位 『何かがうまく』
1973年のアルバム『ひとりごと』に収録されているこの曲はシングルではない。しかし、『夢のマルディ・グラ』のB面として、そしてその4年後には『スリップ・スライディン・アウェイ』のB面としてリリースされていることから、この曲にはサイモンの特別な思い入れがあることが分かる。曲の中で彼は、他者との関係がうまく行っている時はそのことに気付かない、と告白している。「中国には壁がある/1,000マイルも続く万里の長城/外国人の侵入を防ぐためだ/頑丈に造った/僕は自分の周りに壁を建てた/壁は見えない/少し時間がかかるね/僕のそばに来るまで」

第1位 『ダンカンの歌』
サイモン&ガーファンクルの『ボクサー』のように、1972年のサイモンの『ダンカンの歌』には、未知の世界を恐れつつも前進しようとする貧しい少年の姿が描かれている。漁師の息子のリンカーン・ダンカンはニューイングランドを訪れ、群衆の中で伝道活動をする女に出会う。ダンカンはテントの中で彼女に初体験を捧げ、星空の下でギターを奏でる。歌の中には結末らしいものは描かれていないが、ダンカンは初めての性体験から啓示のようなものを受けたようだ。『ダンカンの歌』は、アルバム『ポール・サイモン』の3枚目のシングルだ。ビルボードホット100の最高順位は52位だったが、現在は素朴なソングライティングの傑作として広く知られている。

Translation by Satoko Cho

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