ジェフ・バックリィ、秘蔵音源アルバム発売の全貌に迫る

枠に収まらないソングライティング、驚異的なヴォーカル・レンジ、そして魅惑的なルックスといったジェフの個性は、父親のティム・バックリィから受け継がれたものだ。ヘロインのオーバードーズにより28歳という若さでこの世を去ったティムが、実の息子と対面したのは一度だけだったという。その血筋からティムとの比較は避けることができないが、ジェフは最大のインスピレーションとしてスーフィーのヴォーカリスト、ヌスラト・ファテー・アリー・ハーンを挙げている。ハーンの歌うカウワリに特徴的なエコーの効いたサウンドからの影響は、『ユー・アンド・アイ』においても顕著に表れている。

「彼が次に何を演奏するつもりなのか、予想できないこともあった」ベルコウィッツはそう話す。「彼自身が何も決めていないこともあったからね。そんな時、彼はただ気分に任せてギターを弾き、そして歌った。『ユー・アンド・アイ』の楽曲がパーソナルに響くのは、彼がそうやって曲を生み出していったからだよ。これらの曲で、彼は自分自身に向けて歌っているんだ。だからこそ、リスナーはこの作品から親密なムードを感じ取ることができると思う。ジェフのスピリチュアルでパーソナルな面が垣間見られること、それがこの作品の最大の魅力なんだ」

「あらゆる曲で、ありのままのジェフの姿が描かれていると思う」ギバートはそう話す。「まるで音楽と自分がひとつになっていくような、一種のトランス状態にあるようだった。曲が終わると同時にいつもの自分に戻る、そんな感じだったの。音楽に自分が取り込まれてしまわないように、一音一音に魂を込めて演奏していたんだと思うわ」

ミステリアスな存在として語られるバックリィだが、親密な空気を漂わせる『フライ・オン・ザ・ウォール』や、巧みなギタープレイと歌のコントラストが際立つ『ドリーム・オブ・ユー・アンド・アイ』では、自身のパーソナルな面をさらけ出している。ギバートはスタジオでの何気ない会話も『ユー・アンド・アイ』に収録することを望んでいたという。



「音楽に自分が取り込まれてしまわないように、一音一音に魂を込めて演奏していた」ー (ジェフ・バックリィの母親、メアリー・ガイバート Photo Courtesy of Sony Music

Translation by Masaaki Yoshida

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