常に変化を追い求めるフォール・アウト・ボーイ、キャリア初の武道館公演を振り返る

時代を読み、進化を続けるFOBが「変えられない」こだわり

2017年はルイス・フォンシの「デスパシート」を筆頭にラテン・ポップから多くのメインストリーム・ヒットが生まれたが、FOBもそんなムーヴメントに遅れずすぐに曲を書いた。ラテン風味のエキゾチックなビートを持つ「ホールド・ミー・タイト・オア・ドント」はこれまでのFOBのカタログにはないテイストだが、アルバムの中で浮いてしまうこともなく人気曲としてファンに歓迎されている。その曲をこの日、生で聴けたのはやはり嬉しかった。

かつて『インフィニティ・オン・ハイ〜星月夜』(2007年)でポップ・パンク/エモ以外のジャンルからコラボレイターを集めて新しいサウンドに挑んだ時には、ファンや評論家から「売れ線に走った」と叩かれたこともあった。しかし2018年の今、『マ ニ ア』を聴いて「FOBがEDMやラテンを取り入れて売れ線に走った」と批判する人はまずいないだろう。時代を読み、最高の曲を書く。変化を恐れず、進化を続ける。言葉にしてしまえば簡単だが、バンドとしてこうあり続けるのは本当に難しい。ファンが変化について来られず人気を失っていくバンドもいれば、変化を恐れて最盛期の焼き直しのような曲を書き続けてしまうバンドもいる。

FOBはそのどちらでもなく、時代の流れを読みながら自分たちらしい曲を書き、新しいファンを開拓できているバンドだ。それは武道館に来ていた客層からも読み取れた。筆者のように『フロム・アンダー・ザ・コーク・ツリー』(2005年)で彼らに夢中になった世代もいるけれど、『セイヴ・ロックンロール』(2013年)以降についたと思しき若いファンもたくさん来ている。それは彼らが自分たちの過去の栄光に固執せず、今やるべき音楽を常に正視できているからに他ならない。もちろんその間に彼らは『フォリ・ア・ドゥ』(2008年)の不振、バンドの活動休止とソロ作の商業的失敗など、苦い思いも味わってきた。だからこそフェニックスのように活動休止から甦り、快進撃の末に武道館にまで立った彼らの姿に、筆者は感動せずにいられないのだ。

ピートはマイケル・ジャクソンのカヴァー「今夜はビート・イット」をプレイする前にこう言った。「俺たち『at武道館』(チープ・トリック、同郷シカゴの大先輩)を聴いて育ってるから、ここでプレイするのは特別なことなんだ」。なるほど、彼らにとっても武道館という舞台は自分たちのルーツに関わる大事な場所なのだ。そしてその後には、「明日はパトリックの誕生日だからみんなで歌ってくれる?」と、パトリックに“ハッピー・バースデー”の合唱を会場一同でプレゼントした。

故ダイアナ妃の映像と共に本編が「チャンピオン」で感傷的に締めくくられた後、アンコールは「ユマ・サーマン」でスタート。パトリックの声に疲労が感じられ始めていたが、「アメリカン・ビューティー/アメリカン・サイコ」「僕の歌は知っている」と、復活後の人気曲を連続投下。会場内は2階スタンド席で半袖になっても汗が止まらないくらいの熱気に包まれ、最後はお決まりの「サタデイ」と共に大量の紙吹雪が舞った。

個人的には、「サタデイ」を超えるエンディングにふさわしい曲はいくつもあるのだし、そろそろこの終わり方を変えてもいい頃ではないかと思うのだが、バンドには自分たちの原点を忘れないためにこの曲をプレイし続けたい気持ちがあるのかもしれない。常に変化を追い求める彼らにも、変えられないものだってあるだろうから。















huge night in Tokyo



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