DJ YANATAKE:本当にそこだよね。これから先、ストリーミングでのリリースが中心になっていくことは間違いないし、今回の施策はアーティストからの問題定義のようなところもあるように感じたな。まさに「アルバムの概念とはなんぞや」と。これまでレコードとかカセット、CDに収まる尺で曲を作って収録して、みんながある程度同じ価格帯を決めて、それを販路や流通を介し、それぞれに利益が落ちるようなシステムを作って長年やってきたわけじゃないですか。それが今、大きく変わろうとしている。
DJ YANATAKE:そうそう、最初にやった人がね。刺激を求めているということなんだろうけど、カニエはその象徴だし。俺は今回のリリースの仕方もすごく面白いと思ったし、アルバムって概念も「もういらねえや」と思った。いい曲ができたらそのときに出す、っていうのもすごく今っぽい。逆に言うと、すぐに出せるようになったんだから、時代性にあった出し方としてはすごく面白い。あと、ストリーミングのことを考えると、だんだん曲も短くなってるよね。1分台や2分台の曲が増えてきた。これは、ストリーミングで多く再生されるためだよね。もちろん、これだけが理由ではないけど。
DJ YANATAKE:これから音源ではなくライブで食っていかなきゃ、という局面にいたけど、既にそのビジネスも飽和していると。「こんだけライブやってるの?」っていうくらい、みんなライブやってるもんね。アメリカの大型フェスも、中止になっているアナウンスをよく聞くし「これだけのメンツを集めて中止!?」って思うこともある。
渡辺:だから、そこに代わる新しいモデルができてくるのかな?と思います。
DJ YANATAKE:みんな、アルバムやツアーのたびにマーチャンもちゃんと売ってるし、日本はそこがまだ弱いかなって思うね日本でもこの夏に、AKLOとZORNがジョイント・ツアーをしていたし、そういう動きが活発になっていってもいいと思う。そんな中、日本ではBAD HOPが武道館でライブをやるっていう。
渡辺:彼らは箱を押さえるところも、全部自分たちでやってるんですよね?
DJ YANATAKE:そうだね。それに関しては楽しみでしかないな。BAD HOPを応援したくなる理由って、みんなそれぞれあると思うんだけど、彼らは純粋なヒップホップしかやってないんだよね。例えば、フェスに出た際にいろんなジャンルの人にウケる曲をやりましょうとか、向こう側のファンにも訴えていこうということで他のジャンルの人とコラボするとか、そうやって大きな会場にリーチしてきたヒップホップ・アーティストはこれまでたくさんいた。でも、BAD HOPはマジで純然たるヒップホップ・サウンドだけをやり続けて、それで武道館まで行ける。そこは本当に応援したくなるポイントかな。
DJ YANATAKE:昔はレコードに入ってるインストを使わないとライブもできなかったしね。それもさ、ちょっとしか入ってこないレコードを地元の先輩が全部持っていっちゃうとか、そんな状況もあったわけだし。かつ、全国のシーンを見ながら、東京ではNormcore Boyz、ひいては彼らが所属しているクルーのTokyo Young Visionみたいな子たちが出てくると、東京出身の俺としてはうれしいなと思いますね。
DJ YANATAKE:8月に開催された日本のヒップホップ・フェスとも言えるSUMMER BOMBも、開催5年目の今年は、今までで一番お客さんも入っていて、大成功と言えると思う。MCバトル・ファンが集まっていたフリースタイル・ダンジョンのステージもあれば、外ではダンス・バトルをやっていて、もちろんメイン・ステージでは常にライブをやっていたし、その一方、WEBラジオ「WREP」の生中継もやっていて。コンテンツがたくさんあって、すごく楽しかった。天気も最高だったしね。今年のフジロックで深夜行われていたChaki Zuluくんのステージも良かったみだいだし、それを言うと、KOHHくんやPUNPEEくんも既にフジロックのデカいステージに立ってるんだから、来年以降、フェス・シーンにおけるライブアクトとしての日本語ラップも、もっと進化して行ってほしいなと思いますね。BAD HOPとか、フェス映えするんじゃないかなって思うしね。