ウィル・アイ・アムが語ったエンターテインメントの未来予想図

ウィル・アイ・アム(Photo by Eric Michael Roy)

ウィル・アイ・アムのことを、ヒット曲を連発するプロデューサー兼ラッパーだと思っている人は間違いなく時代に乗り遅れている。少なくとも、シリコンバレーではそうだ。

彼が開発したスマートウォッチ「Puls」は、2015年当時はなかず飛ばずだったが、彼は今もベンチャーキャピタリストたちから注目される存在だ。噂によれば、彼が経営するI.am +社は投資家たちから1億ドル以上もの投資をうけ、家庭用AIアシスタントを開発していると言う。今回は、彼が思い描くエンターテインメントの未来予想図などを語ってくれた。

ーこの先20年間で、ホームエンターテインメントはどう変わるでしょう?

2038年には、「TVって何? うちじゃ壁一面がディスプレイなんだけど」って時代になるだろうね。建築家が壁面スクリーンを作り忘れたんじゃない限り、TVなんて買わなくなる。体重計を買わなきゃいけないとしたら、建設業者が床に体重測定機能を搭載しなかったからさ。鏡を買わなきゃいけないとしたら……そもそも、2038年に鏡って何だよ? 超時代遅れもいいところぜ、ブラザー。何でもスクリーンでないと。当然プライバシーの問題も出てくるけど、それもそのうち解決するだろう。

ー作曲家としては、AIが曲を書くのが心配になるのでは?

曲は曲。人間が書こうと、機械が書こうと一緒だよ。人間のほうが駄作も多いけど(笑)。でも、曲を「書く」ってどういう意味? 俺が音楽を作って、AIに向かって「よう、シャッフルビートを入れてくれ、そこにベースラインを引っ張って、ブーツィ・コリンズ風のグルーヴを足して……」ってこと?

ーAI自体がイチから作曲する、と言うことです。実際、あるAIにビートルズを全曲覚えさせたらしいんですが、そいつはビートルズの「新曲」を書いたそうですよ。

それは曲を書いたことにはならないよ。それはアルゴリズムさ。自動ピアノと同じだよ。自動ピアノに演奏させるには、誰かが譜面を書いてるわけだから。

ー多くの人々は、AIの潜在能力を恐れていますが、あなたは?

AIへの投資は、HI(人類の知能)への投資をはるかに超えている。俺たちはそっちのほうを気にするべきじゃないかな。システムとしてならAIを使いこなせる。その前にちゃんと法律を整備しないといけないけどね。

ーヒップホップは現在、世界の音楽シーンを席巻しています。ヒップホップの天下はいつまで続くでしょう?

世界No.1のスポーツって何だい? サッカーだろ。なぜなら、誰もがプレイできるから。ヒップホップの問題も、誰でもできるってことなんだ。今じゃヒップホップをやるのに特別なスキルはいらない。一番手に届きやすい音楽になった。ラキムやNASのような、ディープで意味深なメッセージ性のある音楽はもう出てこないだろう。世界中いるNAS級のアーティストのためにも、もうヒップホップと呼ぶのは止めようぜ。あれはラップだよ。でも、次にくるのはインスト音楽だと思う。

ー本当に?

ジョン・コルトレーンとか、スタン・ゲッツとか、ジミ・ヘンドリックスとか、ああいう職人系の音楽。それが唯一、知性やセンスを感じられるね。自分の芸術性を唯一表現できる気がする。今は人間同士で競い合ってるけど、最終的にはマシンを相手に競争することになるんだ。AI野郎がラップする時代になるんだよ(笑)。これは避けられない。なぜ『スター・ウォーズ』がすごいかっていうと、ジェダイが常にマシンをコントロールしてるからなんだよ。

ーつまり、ジェダイ級のミュージシャンがいないと、マシンには勝てないということ?

そうそう。『ターミネーター』は、ジェダイがいない世界。人間が敗れ去った世界なのさ。

Translated by Akiko Kato

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