ローリングストーン誌が選ぶ「2018年ベスト・ポップ・アルバム」トップ20

10位 キング・プリンセス『Make My Bed(原題)』
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クイアポップの新たなアイコンがキング・プリンセスだ。このブルックリン生まれの10代は「1950(原題)」という驚きのヒット曲を生み出した。レズビアンとしてのかつての禁断の愛を歌ったこの曲は、二日酔いのラナ・デル・レイのように感傷的に歌われていた。彼女のファンであるハリー・スタイルズは夏のツアー中、会場のスピーカーから「1950」を繰り返し流し、この曲の歌詞をツイートして、世間に彼女を知らしめたのである(彼女の恋人である女優アマンドラ・ステンバーグが「Talia」のMVを監督した)。『Make My Bed』は5曲が収録されたキング・プリンスのデビューEPだが、ポップ作品として十分な内容になっている。そして、キング・プリンスは音楽活動を活発に続けており、最近「Pussy Is God(原題)」という、読んで字の如くの内容のニューシングルをリリースしたばかりだ。

9位 ショーン・メンデス『ショーン・メンデス』
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20歳のショーン・メンデスは、遂に「大人になる」という若手ポップスターの通過儀礼に乗り出した。3枚目となるこのアルバムで、自身の浮世的な欲望をあからさまに表現するようになり、そこにR&Bタッチの実験的要素も加わり、大人のポップへと変貌を遂げている。しかし、彼の真骨頂はリスナーを誘うメンデス独自のメンタルヘルスの旅だ。「イン・マイ・ブラッド/In My Blood」とカーリドとのデュエット曲「ユース/Youth」ではスタジアム・ロックの前座としてプレイする不安と無力感を歌っている。もちろん、肉体的な興味を表わす曲も展開され、アルバムのハイライト曲「ナーヴァス/Nervous」、「パティキュラー・テイスト/Particular Taste」、「ホエア・ワー・ユー・イン・ザ・モーニング?/Where Were You in the Morning?」では、これまでで最も自信たっぷりに陽気な歌声を披露しながら演奏している。

8位 マライア・キャリー『コーション/Caution』
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復活のクイーンが再び戻ってきた。『コーション/Caution』は“これぞ、マライア・キャリー”と呼べる最高傑作で、20世紀と21世紀を股にかけて活躍する歌姫らしい多種多様な楽曲が収録されている。プロデューサーにナインティーン85、デヴ・ヘインズ、ティンバランドを迎え、キャリーは他の追随を許さないユニークさをさらに強化する術を見つけたようだ。最高のソングライティング(「ア・ノー・ノー」は今年最高で最もお茶目な減らず口だ)と、彼女にしかできない歌い方(感情を抑えた「GTFO」と火を吹くようにエネルギッシュな「ポートレイト」を聞いてほしい)も健在だ。この作品は、マライア・キャリーが不滅のヒットメーカーだと世間に知らしめる辛口のリマインダーといえる。

7位 トロイ・シヴァン『ブルーム』
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今作『ブルーム』で、トロイ・シヴァンは他のポップ・シンガーと自分を隔てる可能性をやっと発見したようだ。このアルバムからは南アフリカ生まれ、オーストリア育ちのシンガー・アクター・ユーチューバーの繊細さが溢れ出ている。無邪気さの喪失、傷心、親密さの欠如、思春期から大人への狭間の不安感などなど。元気のいいタイトルトラック、心が痛む「Postcard/ポストカード」、心をとろけさせる「Lucky Strike/ラッキー・ストライク」では、シヴァンのかすれ気味のソフトヴォイスが力強さを見せる。このアルバムはスターダム前夜のスターの音楽だ。

Translated by Miki Nakayama

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