トランプ大統領、批判されると「人種差別者だ」と叫ぶお決まり戦略

7月上旬に、アレクサンドリア・オカシオコルテス下院議員(民主党、ニューヨーク州)、イルハン・オマル下院議員(民主党、ミネソタ州)、ラシダ・タリーブ下院議員(民主党、ミシガン州)、アヤンナ・プレスリー下院議員(民主党、マサチューセッツ州)に対するツイートで、「完全に崩壊して犯罪がはびこる場所」に「帰るべきだ」とトランプは発言した。トランプが大統領になってから出した人種差別的コメントの中でも、群を抜いて明確に人種差別を露わにしている。共和党の立法府議員たちは、この攻撃をイデオロギーに関する単純な挑戦として正当化を試み、トランプ大統領お得意の「好きじゃなきゃ出ていけ」という不条理なロジックを不問に付した(このロジックに従うと、一方の政党がホワイトハウスを占拠している間、もう一方の政党の上下院議員は国内にいられないことになる)。

この下手な言葉遣いの発言が新たなサイクルに突入すると、トランプは件の女性下院議員たちを人種差別者と呼んだ。そしてトランプは、「あのチームは人種差別の激しいトラブルメーカーの一群で、若輩で、経験不足で、大して利口じゃない」とツイートした。

カミングス下院議員への人種差別者攻撃は、女性下院議員たちへの攻撃同様に、フォックス・ニュースを見ていて頭にきたトランプが衝動的に行ったことで、この攻撃の副次的な影響も同じパターンを辿った。共和党議員たちはトランプの一連のツイートには人種差別的な要素は一切ないと主張し、議会で最も注目を集めるアフリカ系アメリカ人の批判好きな議員が属する地域の状況を正直に語っただけだとした。そして、トランプはカミングス議員をお決まりの手法で人種差別者呼ばわりしたのである。


<トランプのツイート> 2019年7月29日午前4時18分
人種差別者のイライジャ・カミングスが、自分の選挙区の良き人々を救うことにもっとエネルギーを注げば、きっとバルチモアだって、長年に渡る彼の無能なリーダシップで生まれた無秩序を解消する方向に進むかもしれない。彼の急進的な「監視」などジョークだ!

女性下院議員たちとカミングス下院議員に対する人種差別者呼ばわりは、トランプ自身の人種差別攻撃の果てにメディアが押した「人種差別者」の烙印に端を発している。トランプの一連のツイートは、小学生が相手をけなすときに言う「おまえ、バカじゃね?」程度の洗練さだ。しかし、その内容は小学生よりも陰湿で、人種差別をなくそうと主張する大統領のキャンペーンに継続的にダメージを与えるものでもある。

トランプはこれと同じような投稿を今年2月にも投下している。これは映画『ブラック・クランズマン』でアカデミー賞脚色賞を獲得したスパイク・リーが、授賞式で行ったスピーチにトランプが反応したものだった。そのスピーチで、リーは自分の祖先がアメリカを建国したと讃え、2020年は憎しみよりも愛を選んでくれとアメリカ国民に向かって叫んだ。当然のことだが、このスピーチにトランプの名前など一切出ず、当然トランプを人種差別者と非難することもなかった。しかし、トランプはリーのスピーチを「お前の大統領に対する人種差別攻撃だ」と大急ぎで反応した。

また、なんの根拠もなく、トランプは幾度となくバラク・オバマを人種差別者と呼んでおり、2013年に投稿したオバマ関連ツイートは、トランプが大統領選の選挙運動を始めて以来、数えきれないほど繰り返されてきた人種差別攻撃パターンの予告編とも言えるものだった。「本物の人種者別者のオバマ大統領を攻撃する人間が人種者別者と見なされるなんて、面白いと思わないか?」がそれだ。


<トランプのツイート>2013年9月7日午後10時14分
本物の人種者別者のオバマ大統領を攻撃する人間が人種者別者と見なされるなんて、面白いと思わないか?

このツイートを投稿したのは、トランプがオバマ大統領に「大学の記録と申込書」と「旅券の申込書と記録」を公開したら500万ドル(約4億円)寄付すると提案してから11ヵ月ほど経っていたが、相変わらずオバマはアフリカ生まれというトランプ立案の陰謀説をゴリ押ししていた。ニューヨーク・タイムズ紙によると、トランプは2017年までこの陰謀説を信じ込んでいたという。

そんなトランプなのだから、今でもその陰謀説を信じていると我々が思っても、あながち間違いではないかもしれない。

Translated by Miki Nakayama

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