ライヴ・エイド出演の立役者が語る「クイーン」バンドの一員として共に歩んだ35年間

ーロジャーとブライアンは演奏を楽しんでいるのがよく分かりました。長く封印されていた自分たちの曲を、ファンの前で演奏できるようになったことが嬉しくて仕方がないのでしょうね。自分たちが作り上げたものの大きさを、改めて実感しているのだと思います。

その通りだね。彼らにとって、音楽は何より大切なものだからね。だからこそ彼らはステージに立ち続けるわけだけど、マディソン・スクエア・ガーデンを満員にしたり、今でも世界中を駆け巡ってることに、すごくやり甲斐を感じていると思うよ。来年には日程をもう少し追加することを考えてるんだ。素晴らしいことだよ。彼らはどっちも70代で、僕ももうすぐその仲間入りだ。ああいう規模のライブをやると、当然身体にも負担がかかる。今回の日程はもうすぐ終わりだけど、その後は全員がしばらくオフを取るんじゃないかな。9月に(Global Citizen Fest出演のため)ニューヨークに戻ってくることは、今から楽しみにしてるけどね。

ークイーンの伝記映画のアイディアを初めて聞かされた時、どう思いましたか?

うーん、懐疑的だったね。正直にいうと…ラミ・マレックの演技は本当に素晴らしかったし、オスカー受賞は然るべきだと思う。でも事実を捻じ曲げてまで、ストーリーをドラマチックにするハリウッドのやり方は疑問だね。だからあれは、真実を少し脚色した物語ってことでいいんじゃないかな。

ー「ウィ・ウィル・ロック・ユー」が80年代に生まれたことになっていたり、ライヴ・エイドの前にバンドが解散したとされていたり、ファンとしては首を傾げたくなる箇所もあります。

まさにそういう部分のことだよ。モダンなエンターテインメントって、きっとそういうものなんだろうね。テレビに映った途端、それが事実になってしまうんだ。

ー自身が経験した出来事が脚色して描かれることに、違和感を覚えたと思います。

言いたいことがあったのは事実だけど、大衆向けのエンターテインメントはそういうものなんだって割り切ってるよ。インチキをして作られた曲や、まともに歌えないシンガーの曲がヒットする時代なんだからさ。映画の場合、事実云々は作り手の意向次第ってわけさ。

ー 一方で、多くの人があの映画を観てクイーンのファンになりました。以前は1日のみだったマディソン・スクエア・ガーデンでの公演も、現在では2デイズとなっています。

確かに!人気の向上ぶりは前回のツアーの時から感じてたよ。「あのヴォーカルやるじゃん」みたいな感じでアダムが評価されるにつれて、話題性も集客も伸び続けてた。そんな時にあの映画が公開されて、一気に火が点いたんだ。その気になれば、死ぬまでツアーを続けることも可能だろうね。僕はごめんだけどさ。映画で使われた曲になると大合唱が起きるのに、そうじゃない曲を演ると客がポカーンとしてるのは面白いね。

ーアダムと組んでからの9年間で、彼はシンガーとパフォーマーとしてどう進化しましたか?

ステージでの彼は自信に満ちてるよ。フレディーのことやバンドの歴史を意識しながらも、彼は自分自身でいる術を身につけたんだ。誰かの真似をする必要はないってことを、彼はよく理解してる。彼はアダム・ランバートであり、クイーンのヴォーカリストだ。彼の歌唱力やステージでの存在感は常に申し分なかったけど、今じゃライブを楽しんでるよ。

ー今後の活動についてはいかがですか?ロジャーとブライアンが引退したとして、アダムとクイーンを続けていくつもりはありますか?

ワオ!そんなこと考えたこともなかったよ。うーん、どうだろうね。あり得ないとは言わないよ。その音楽を生で聴きたいっていう需要がある限り、コンサートの開催は可能だからね。どういう形になるかは、僕にはわからないけどね。彼らはまだ現役バリバリだからさ。ストーンズが今もやってるってことには、きっと刺激されてるんじゃないかな。老いる前に死にたいなんて考える人も昔はいたけど、今は誰もそんなこと言わないだろ?何をするでもなく家でボーッとするか、世界中をツアーで回って素晴らしい時間を過ごすか。僕の答えは決まってるけどね。

ー最後の質問です。これまでの人生で「ボヘミアン・ラプソディ」を聴いた回数はどれくらいになると思いますか?

飽きるほどだってことは確かだよ(笑)想像もつかないね!

Translated by Masaaki Yoshida

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