タル・ウィルケンフェルドが語る音楽人生、レジェンドとの共演秘話、トゥールからの影響

ープライマスのレス・クレイプールともお友達ですよね。彼とベース・バトルをしたことはありますか?

タル:レスがステージでプレイするのは数回見たことがあるし、朝食を一緒に食べたことがあるわ。あとショーン・レノンが共通の友人ね。彼とすごく親しいというわけではないけど、とても優しい人だわ。というか、私はベース・バトルなんてものには興味がないのよ。一度ヴィクター・ウッテン、オテル・バーブリッジと3人ベースでプレイしたことがあるけど、“バトル”なんて感じではなかった。マーカス・ミラーとも共演したことがあるけど、あくまでジャムの範疇よ。



ーあなたのベース・プレイのファンについてどう考えますか?

タル:私のベース・プレイを気に入ってくれるのはすごく嬉しいし、光栄に思うわ。「ホーンテッド・ラヴ」なんかは基本的にベース・ソロに歌を乗せたものだしね。でもアルバムの曲はどれもソングライターあるいはストーリーテラーとして書いたもので、ベーシストとして書いた曲は基本的にないわ。

ー『ラヴ・リメインズ』には現キング・クリムゾンのジェレミー・ステイシーが参加していますが、いわゆるプログレッシブ・ロックとはどのような意識を持っていますか?

タル:“プログレッシブ・ロック”といってもキング・クリムゾンとピンク・フロイドとイエスとジェネシスはまったく異なっているし、正直これといった意識はしていないわ。ピンク・フロイドの『ザ・ウォール』は大好きだし、いつか音楽とコンセプト、ヴィジュアルが一体となったコンセプト・アルバムというものに挑戦してみたい。初めてキング・クリムゾンを聴かせてくれたのはトゥールのダニー・キャリーだった。彼の家に行ったとき、午前4時ぐらいに大音量で聴いたのを覚えている。どのアルバムだったか、忘れてしまったけどね。その後、キング・クリムゾンのライブにも行ったわ。

ープログレッシブ・ロックのミュージシャンと共演したことはありますか?

タル:デヴィッド・ギルモアがロンドンのロイヤル・アルバート・ホールでやったライブに出たことがあるし、トレヴァー・ラビンのアルバム『Jacalanda』(2012年)でプレイしたこともあった。ガスリー・ゴヴァンやヴィニー・カリウタと一緒にやったことがあるけど、それが“プログレッシブ・ロック”かは判らない。



ー音楽をやっていて、“女性であること”を意識しますか?

タル:音楽をやっているときは自分の性別や年齢、国籍、人種などはまったく考えていない。もちろん生まれ育った文化などは自分の音楽に反映されているだろうけど、大事なのはソウルよ。共演するミュージシャンも自分と何歳離れているか、どこの出身かなんて考えることはない。ソウル・トゥ・ソウルの交流が何よりも大事ね。

ー2007年にあなたを迎えてから、ジェフ・ベックが女性シンガーやミュージシャンと共演する機会が増えました。ロンダ・スミスやカーメン・ヴァンデンバーグが良い例ですが、何故女性重視になったのでしょうか?

タル:私の前にジェニファー・バッテンもいたけどね。何故女性ミュージシャンと組むことが増えたのか、ジェフと直接話したことはない。ただ、彼が一緒にやってきたミュージシャンは男女問わず一流ばかりよ。それに私がジェフと一緒にやるようになったのは、私が女性だからではなかった。元々はピノ・パラディーノがクロスローズ・フェスティバルでベースを弾く筈だったけど、どうしても参加出来なくて、私に声がかかったのよ。ジェフは性別でミュージシャンを選んだりしないのだと思う。

ー今後はソロ・アーティストとしての活動をメインにしていきますか? ベテラン・アーティストのバックを務めたりもするでしょうか?

タル:最近、コメディアンでブロードキャスターのマーク・マロンとの共演曲でプレイして、プロデュースしたわ。もちろんセッション・プレイヤーとしてベースを弾くのも楽しいし、これからも続けるだろうけど、それよりもソングライターとしてキャリアを築いていきたい。他のミュージシャンと一緒に曲を書いたり、プロデュースしたりも興味があるし、自分の音楽をオーケストラと共演してみたいわね。「ホーンテッド・ラヴ」にオーケストラをフィーチャー出来たのは嬉しかった。いつかアルバム1枚をオーケストラと共演してみたい。

ージェフ・ベックの『エモーション・アンド・コモーション』(2010年)でもオーケストラとの共演が実現していましたね。

タル:あのアルバムでは私はベーシック・トラックを録音して、その後にオーケストラをオーバーダビングしていたから、あまり“共演”という印象がないのよね。スタジオ・ライブみたいな形でオーケストラと共演するのが、私の理想よ。

ー近年ではフルレンス・アルバムではなく1曲単位で発表していくアーティストも増えてきましたが、あなた自身は“アルバム”という単位にこだわりはありますか?

タル:「コーナー・ペインター」「アンダー・ザ・サン」はアルバムの前に1曲単位で発表したけれど、元々アルバムの一部として書いた曲だった。今後はどうなるか判らないけど、アルバムという単位で起承転結があるのが好きなのよ。ピンク・フロイド『ザ・ウォール』みたいにね。もしかして毎月1曲ずつデジタルで発表して、12カ月したらそれらをまとめてLPで出しても面白いかも知れない。

ー新しいアルバムはいつ頃聴けそうでしょうか?

タル:『ラヴ・リメインズ』の曲はもう何年も前に書いたものだし、既に新曲のインスピレーションが幾つもある。早く次のアルバムを作りたいわ。次のアルバムまでもう10年待たせることはないから、楽しみにしていてね!


Photo by Hana Yamamoto

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