Superflyによる通算6枚目のオリジナル・アルバム『0』は、シンガー・ソングライターとしての越智志帆の飛躍的な成長と、新機軸へと果敢に挑む姿が刻まれた意欲作だ。
前作『WHITE』からは、およそ4年半ぶり。喉の不調のため2016年夏からライブ活動を休止していた志帆は、デビュー10周年を記念した『Superfly 10th Anniversary Premium LIVE “Bloom”』で1年8カ月ぶりにステージに復帰を果たす。蔦谷好位置や島田昌典、UTA、トオミヨウといった気鋭のクリエーターをプロデューサーに迎え、オーガニックかつ壮大なバンド・アンサンブルを全編にわたって展開している。
アルバム・タイトルとなっている「0(ゼロ)」は、「何もない」という意味ではなく「ゼロがある」状態のことを指すという。プラスでもマイナスでもなく「フラット=ゼロ」の状態に立ち返った志帆は、そこで何を掴み取り、この素晴らしい傑作を生み出したのか。彼女の最近のライフスタイルを紐解きながら、アルバム『0』の核心に迫った。
─まずはツアータイトル、そしてアルバムタイトルにもなっている『0』の由来についてお聞かせください。
志帆:アルバムのタイトルは、制作の後半くらいに決まりました。その時に出来上がっていた曲たちを並べてみると、どの歌詞も主人公が私以外の人物だったんです。これまで私が書いていたSuperflyの楽曲は、どれもエッセイ的というか、自分について歌ったものが殆どだったんですけど、今回は私の想像によって作り出された架空の物語。そういう意味ではエゴが入っていないんですよね。
─曲そのものを俯瞰しているところがあるというか。
志帆:そう。それってすごくフラットな状態……つまりプラスでもなく、マイナスでもない「ゼロの状態」なんじゃないかなと。しかもその状態というのは、最も多くの可能性を持っている状態だなって気づいたんです。自分がゼロの状態で作れた初めてのアルバムであり、聴いた人の心もフラットな状態、ゼロの状態にすることが出来たらいいなという思いもあって、このタイトルになりました。
─ご自身が「ゼロの状態」になれたのはどうしてでしょう?
志帆:思い返してみれば、お休みにはいる前は感情がプラスからマイナスへと常にグラグラ揺れ動いている状態でした(笑)。でも、お休みをいただいて自分の好きなことばかりやって過ごしていくうちに、その揺れが徐々に穏やかになっていくのを感じたんです。「あ、これがフラットな状態、自分らしくいられている状態なんだな」って。
肩書きとか一旦全てなくなったのも大きかったと思います。そのうちに「曲を作りたい」「歌を歌いたい」という気持ちが自然と湧き出てきて。そこから生まれたものこそ、自分にとって本質の作品じゃないかと思ったんですよね。アルバムの制作が本格的に始まったのはそこからでした。