女性シンガー・ソングライターの先駆者、りりィの軌跡をプロデューサー寺本幸司が語る

糸井重里とのコラボレーション

田家:続いて時代が少し先に進みまして、1979年の「おやしらず」。寺本さんが選んだ6曲目ですね。作詞が糸井重里さんで、アルバム『マジェンダ』に収録されております。

寺本:これも業界的な話になっちゃいますけど、坂本龍一なんかも参加してバイ・バイ・セッション・バンドの色も変わっていくんで。でもだんだんりりィの中である意味で、僕から言うとまだシングル優先の時代に、レコード会社の意向もあってシングル志向がどんどん身体からなくなっていくわけですよ。アリスのメンバーなりに言うと、どんどん自分たちのレベル高い曲を求めていくと大衆から離れていってしまう。りりィにもそういう曲を書かせてみたいなと思ったんですけど、そこから一回して、りりィを役者っぽく置いて「この女に歌ってもらいたい歌詞を書く人はいないかな」って探してみるようになった。康珍化さんとも組んだりしてみたんですけど、その流れで糸井さんにお願いして出来上がった曲です。

田家:このアルバムは、作曲も桑名正博さんとか筒美京平が書かれたりとかしてますね。

寺本:りりィが深いところまで曲がいくようになっちゃったので、もうちょっと浅瀬を狙った歌を作りたいなっていう気持ちはありましたね。

田家:本人の音楽に対する意識は変わってきているなって如実に感じられますね。

寺本:それは悪くないんですよ。表現者としてやることをやってきたっていうのはあるんですけど、そういうところにこの人と組み合わせたらどうなるかなって実験的にやってみた時期ではありましたね。

田家:「おやしらず」の前のシングルは『ベッドで煙草を吸わないで』っていうのも出してましたね。なんでこういうのを出したんだろうって思った時もありました。

寺本:「わたしは泣いています」の延長線上じゃないかって言ったんですけど、りりィのシングル志向の曲が行き詰まりを見せていると感じた時期でもありましたね。

田家:次の展開を見せようとした時期だったと。曲もアレンジも木田さんですね。

寺本:一時期離れていたんだけどね、「お前の出番だよ」って木田に言って。

田家:パーカッションもかっこいいし、彼の本業でしょうしね。もう一回木田だよっていうタイミングの選び方、それがプロデューサー感覚っていうことなんでしょうか。

寺本:じゃないでしょうか。「寺さんはいつも俺のこと見てくれてる」っていう信頼関係がないと、「今お前だよ」って言えないじゃないですか。

・りりィ「おやしらず」

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