LEARNERSが語る新たなスタート、パーティ・バンドから「表現者」への覚醒

ひとりの表現者が誕生する瞬間

ー結成当初をいま思い返すと、今回のようなレコーディングは想像もつかないことだったのでは?

チャーべ:そうですね。LEARNERSはただ好きな曲をカバーするっていうところから始まって、それがみんなと出会っていくなかで、徐々にバンドになっていった。それが一時期ちょっと行き詰まったかのように思ってたんですけど、こんな未来もあるんだなって。「ああ、バンドってこういう感じだったな」っていうのを思い出しましたね(笑)。メンバー間でピリつくときがあるのって当たり前なんだけど、LEARNERSはそれがなかったから。

堀口知江:そういうのはなにもなかった(笑)。私のなかでLEARNERSは楽しむだけのバンドっていう感覚だったし、それがかっこいいと思ってたんです。みんなでそれぞれの生活と仕事があるなかで集まって、ライブして、反省会もなにもしないで帰るっていう(笑)。

チャーべ:反省会はこの先も多分しないと思うけどね(笑)。それもまたすごいことなんですよ。この5人だから成し得たことだし、それを経たうえでの今作なので。とりあえず、ここでひとつ乗り越えたなって感じですね。僕は結成当初から、このバンドはそんなに長続きしないだろうなと思ってたし。

ーえ、そうだったんですか?

チャーべ:2ndアルバム(2017年の『More Learners』)を出した時点で、「次はもうこの感じでは作れないな」と思ってました。それこそ今までみたいにただ楽しいだけではやれないなって。


2016年のライブ映像

ーそうだったんですね。LEARNERSはずっと上り調子だと感じていたから、今のお話には驚きました。

チャーべ:まあ、パーティ・バンドってそういうものですから。最高の2ndアルバムをだしたところで終わるっていうのも全然ありだし、それはしょうがないなって。でも、この5人がもう少し一緒にいたいという感覚を持っているのであれば、こうして乗り越えられるんだなって。それが今回でわかったんです。

ーLEARNERSはもうパーティ・バンドじゃないんですか?

チャーべ:どうなのかな(笑)。僕らはそのつもりだけど、それはお客さんがどう思うのかに任せますって感じですかね。オリジナルがそうなったってだけであって、ライブのテンションは変わらないし。ただ、『LEARNERS HIGH』に収録されてる「ALLELUJAH」のカバーと「CASSIS OOLONG」がなかったら、多分その先の2年はなかったと思う。「CASSIS OOLONG」みたいな曲はいつまでも古びないというか、紗羅がいつ歌っても似合うんですよ。「ALLELUJAH」に関してはメンバー全員が特別な想いを持ってて。あの曲をカバーしたことによって、LEARNERSは今までのようにはいかなくなったし、それに匹敵するようなものをなにか作らなきゃと思ってました。



ーそれでたどり着いたのが今作だと。

チャーべ:うん。とはいえ、僕らの場合はプライマル・スクリームみたいにいきなりは変われないんですけど(笑)。LEARNERSはこれからどういうふうに変わっていけるか。それが今回のアルバムですこし見えた気がしてます。だから、次はもうなんでもイケるかなと思ってて。この5人で音が作れさえすれば、それがロックンロールじゃなくても別にいいというか。それはそれで面白そうだなって。

堀口知江:私も、きっとLEARNERSはここから少しずつ変わっていくんだと思います。いつか今回のアルバムを振り返ったときに「ああ、ここから私たちは変わったんだね」と思うんじゃないかな。

ー今作はバンドの過渡期を捉えた作品ということですね。

チャーべ:本当にそうですね。今まではとにかく「この5人のアンサンブルを見てくれ!」っていう感じで、わりとイージーに自信をもってやってたんですけど、今回に関してはこれがどう評価されようが、別にいいやって感じだし。

堀口知江:うん。私もそうですね。

チャーべ:変な言い方なんですけど、これが駄作と言われても全然いいんです。もしこれで離れていく人がいたとしてもかまわない。出来ただけで超ハッピー。だって、ひとりの表現者が誕生する瞬間に立ち会えたんですからね。しかも、そこにチエちゃんたちがこれまで積み重ねてきたものをすべて注ぎ込んでくれた。あらためて、このメンバーは本当にすごい人たちだなと思いました。僕、今までいろんなミュージシャンと接してきましたけど、それでもこの4人は本当にすごいなと思う。そういう誇りを今回あらためて感じました。

ーこれがLEARNERSの新たなスタートだと。

チャーべ:まさに。紗羅ちゃんも「このアルバムがLEARNERSというバンドにとって初めての作品みたいな気がする」みたいなことを言ってたんですけど、たしかにその通りだなと僕も感じてて。まあ、これで全曲オリジナルだったら、もっとかっこいいんだろうけど。それはまたこの先の目標にすればいいし、別にそうならなくてもいいとも思ってる。というか、この流れで「次は全曲オリジナルでいこう!」みたいな話になると、俺がまたさらに痩せ細ってしまうので(笑)。

ー(笑)。これからもなるがままになるだろうと。

チャーべ:うん。きっと紗羅ちゃんのなかには次の発想が生まれてて、そこからLEARNERSに合うものと、そうじゃないものの線引きが徐々にできてくると思うんです。そこで僕がいま思ってるのは、その先に彼女のソロとかがあったらいいなって。あるいは、ゆくゆくは堀口チエと紗羅マリーのスプリットが出来たりしたら、僕としてはLEARNERSをここまでやってきた甲斐がありますね。今作をつくったことで、そういう展開が見えてきたし、こうなったら紗羅ちゃんはやるしかないはずなんで。彼女はもう、表現したいことが溢れ出して止められなくなると思う。ようやく始まったなって感じですね(笑)。


Photo by 小野由希子




LEARNERS
『HELLO STRANGER』
発売中


LEARNERS
“HELLO STRANGER” Release ONE MAN TOUR

2020年3月2日(月)名古屋QUATTRO
2020年3月3日(火)梅田QUATTRO
2020年3月10日(火)渋谷QUATTRO

https://learnersband.tumblr.com/

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