同性愛者も献血できるようにガイドライン改訂、米食品医薬局

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同性愛者の多くは、自分たちを献血の対象外とするアメリカ食品医薬局(FDA)のポリシーは差別的だとして、献血ガイドラインに長年抗議の声を上げてきた。だが新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によって血液が不足する中、FDAはポリシー撤回を発表した――多少。

FDAはクィアの男性に対し、献血前の3カ月間は性交渉を控えるように、と推奨する改訂版ガイドラインを発表した。それまで施行されていたガイドラインでは、性交渉は1年間禁じられていた。この規定は、同じく献血まで1年間待たされていたセックスワーカーや元薬物乱用者、最近タトゥーやピアスを入れた人にも適用される。

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「このようなポリシーは、偏見ではなく科学に基づいて制定されるべきです」。 LGBTの市民権を訴える活動団体Lambda Legal所属弁護士で、HIVプロジェクト・ディレクターのスコット・ショーテス氏はローリングストーン誌に宛てた声明でこう述べた。「Lambda Legalは、こうした差別的なポリシーが改善されたことを喜ばしく思います――ですが、未だ差別的です。今後もさらなる改定が行われることを期待します」

現在アメリカは深刻な血液不足に陥っている。ソーシャル・ディスタンシング対策により、献血センターに行く人の足が遠退いたのが主な原因だ。アメリカ赤十字社の先月の発表によれば、パンデミックの影響でおよそ2700件の献血イベントが中止されたという。

COVID-19の生存者からの血漿提供が求められている今、血液及び血漿不足は特に問題だ。医師が回復した人の血漿にウイルスの抗体があるか検査し、感染した患者に注射する血漿分画製剤を用いた治療には欠かせないからだ。

こうした輸血不足の状況を踏まえ、政治家やLGBTQの活動家はFDAのガイドラインに抗議の声を上げていた。ガイドラインは1980~90年代のHIV/エイズ流行時の混乱の名残であり、こうしたポリシーのせいで患者は救命治療を受けられずにいる、というのが彼らの主張だ。「COVID-19に感染して、今は回復したゲイの男性の同僚を何人も知っているわ」と、ニューヨークの救急医、ダラ・キャス氏がツイートしている。「死にかけている患者に血液や血漿が提供できないなんて、もはや犯罪行為よ」

FDAのガイドライン改定はLGBTQ活動家には朗報だが、現在の悲惨な状況下では十分ではない、と感じている人も多い。「今回の勝利は……不完全勝利です」と、すでに2万4000人の署名を集めているNGO団体GLAADは嘆願書で訴えている。「我々は引き続き、禁止規定の完全撤廃を求めてゆきます」

Translated by Akiko Kato

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