Chara、フィオナ・アップルを語る「このアルト・ヴォイスを聴きなさい」

パーソナルな経験について歌う理由

─お話を聞いていて思ったのは、今回のフィオナの新作は「声のアルバム」とも言えますよね。楽器や音数が少ないぶん、ボーカルやコーラスのテクスチャーが際立っていて。

Chara:そうかも。こんな時期だし、ピアノと歌だけの配信ライブとか聴いてみたいけど、今回プロモーションを一切やってないんでしょう。残念だなあ。あと、ジャケット写真にびっくりした(笑)。わざとこういう写真を使っているのかな。美人ってあんまり美人に撮られたくない人もいるけど……恥ずかしがり屋なのかしら。

─「自分がどう見られているか?」みたいなことに関しては、人一倍センシティブなのかもしれないですよね。その一方で、「自分らしくあること」についても試行錯誤している印象。以前、MTV Video Music Awardsでのスピーチが批判されたこともあったし……。(※)

※1997年のMTV Video Music Awardsにて“Best New Artist”を受賞した際、マヤ・アンジェロウ(公民権運動にも参加した活動家)の言葉を引用しながら「この業界は腐りきっている。この業界の人間がクールだと決めたこと、ファッション、考え方に影響されて自分たちの生き方を変えるなんて馬鹿げている」とスピーチ。マスメディアやセレブたちから批判を受けた。

Chara:ああ、ありましたね。そういうことにも疲れちゃったんじゃない?(笑)最近の彼女がどう思っているのか分からないけど……。


1997年、MTV Video Music Awardでのフィオナのスピーチ

─今作の歌詞では、自身のパーソナルな経験についても赤裸々に歌っています。そういった姿勢についてはCharaさんどう思いますか?

Chara:それが普通じゃないかな。誰でも多かれ少なかれ、人には言えない感情や秘密を心の中に抱えていて、アーティストはそれを表現するからこそ「いい」と思ってもらえたり、「私もそんなふうに生きたい」と思ってもらえたりするわけだしね。「自分が抱えている孤独は、自分だけのものじゃないんだ」って気づかせてくれる存在というか。

─自身のレイプ体験を歌うのも(「Relay」「For Her」など)、それが「恥ずべき類の体験ではない」と伝えたいからだとインタビューで話しています。

Chara:でも、それは結構どうでもいいことだったりするかな。例えばそのインタビューで、フィオナが全く違うことを言ったとしても、彼女の歌を聴いて、その中の言葉が一つでも自分の心に引っかかって、それがメロディと一緒に心の中に入ってくる……そういう魔法みたいな体験を受け手がどう解釈するか、どう刺さったかが「真実」「リアリティ」だと思うのね。

─確かにそうですよね。

Chara:もちろん発言も重要なんだけど、それが作品よりも先に来てしまうと、ね。彼女はそれ(レイプ)以外にも、いろんな体験をたくさんしてきているわけじゃない? 美しいものもたくさん見ているだろうし、背負ってきているものも、影響を受けた音楽もたくさんあって。そういう中から生み出されたのが彼女の曲だから。まあ、それも本人じゃないから分からないけどね?(笑)

─先ほどの「自分がどう見られているか?」「自分らしくあること」についての話に戻りますが、Charaさんに女性ファンが多いのは、デビュー当時から「女性としての美しさ、可愛らしさ」を前面に打ち出す一方で、「男性が求める女性らしさ」というものからは常に自由だったからじゃないかなと思うんですよね。

Chara:うーん、どうなんだろう。私自身は「ずっと一生懸命頑張ってきたから」と思っているかな。別に美人で売っているわけでもないけど、曲を書いたり歌詞を書いたりする自分の才能は信じていて。「人は誰でも10個以上才能がある」なんて言われてるけど、私はその中の「曲を書く」才能を諦めないで、ブレずに続けてきたというか。自分のやっちゃいけないことも分かっているし。それって簡単なようで、なかなか大変なことなのね。どんな仕事でもそうだと思うけど。

─「やっちゃいけないこと」とは?

Chara:アーティスト性を蔑ろにすること。例えばメジャーでやっていると、すごくたくさんの人が動くから、全部チェックできなくて「あれ? こんなことになってるの?」みたいなことも起きるんだけど、そういう時に勇気を出して、「そっちじゃない方がいいと思う」ってちゃんと言うこと。デビュー当時からそれを繰り返してきたのね。実は、Charaとしては世の中的に最も知られている曲「やさしい気持ち」でも戦いがあったの。あの曲はベースが入ってないんですけど、保守的なアレンジにされてしまいそうだったので、ディレクターが寝ている間に仕上げちゃった。



─そうだったんですね(笑)。ベースレスのシングルというと、プリンスの「When Doves Cry」を思い出しますけど、J-POPシーンでは当時画期的だったでしょうね。

Chara:それから「自分らしさ」ということでは、やっぱり私はオシャレも好きだし、洋服でも何でも好きなものに囲まれて暮らしたいと思っているわけ。もちろんステージに立てば足の先から頭の天辺まで、空気感も話す内容も全てが表現になるから、そこにもちゃんと一生懸命こだわってやってきた。それがちゃんと伝わっているのかもしれないなって。「軽やかに努力する」というかね、それを見て「私も頑張れそう」と思ってもらえたら嬉しいですね。

─今回、ぜひ若い人たちにフィオナ・アップルを聴いてもらいたいって思っているんですけど、もしCharaさんが自分のお子さんたちにフィオナを勧めるとしたら、どんなふうに進めますか?

Chara:えー、なんて言うだろう(笑)。「このアルト・ヴォイスを聴きなさい」かな。1曲あげるとしたら、私はやっぱり「Never Is A Promise」が一番好きだけど、私自身も、最新のアルバムも聴いて欲しいと思って音楽を続けているから、彼女の曲で一曲でも好きな曲があれば絶対に最新のアルバムをチェックするべきですね。私の新しいのもね(笑)。




フィオナ・アップル
フェッチ・ザ・ボルト・カッターズ
2020年7月22日国内盤リリース
7月22日発売予定 価格︓2,400円+税
歌詞、対訳、解説つき
初回封入特典:ステッカーシート
購入・再生リンク:https://lnk.to/FionaApple_FTBC
日本公式サイト:https://www.sonymusic.co.jp/artist/FionaApple/


Chara
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