アメリカ土着の呪縛、『ウィスコンシン・デス・トリップ』とは?

ポップカルチャーとの接点

なおポピュラー音楽のファンだったら『ウィスコンシン・デス・トリップ』はアメリカのヘヴィ・ロック・バンド、スタティックXの1999年のデビュー・アルバムのタイトルとしてお馴染みだろう。また、エコー&ザ・バニーメンのアルバム『フラワーズ』(2001)のジャケット写真はヴァン・シェイクによる本書の写真に彩色したものだ。

『ウィスコンシン・デス・トリップ』は1999年、イギリス出身のジェイムズ・マーシュ監督で映画化されている。原作と同じく、ひとつのストーリーに縛られることなく、ランダムにさまざまなエピソードを詰め込んだ映画版だが、窓ガラス割りの常習犯で100回以上投獄経験のあるマリー・スウィーニー、放浪者を射殺した14歳のジョン・アンダーソン少年など“動きのある”内容になっており、 静けさの中の狂気は薄めだ。『ウィスコンシン・デス・トリップ』の鬱蒼とした呪縛の森へと足を踏み入れるには絶好の秀作だが、映画を楽しんだ後はぜひ原作へと進んでいって欲しい。

ちなみに映画版のナレーションを担当しているのは『エイリアン』(1979)などへの出演で知られ、2020年6月19日に亡くなったイアン・ホルムだ。また、マーシュは後にスティーヴン・ホーキング博士夫妻を題材に取った『博士と彼女のセオリー』(2014)を監督している。

なおウィスコンシン歴史協会Wisconsin Historical Societyのウェブサイトでは6000枚以上におよぶヴァン・シェイクの写真を見ることが出来るので、そちらもオススメだ。

2011年にはヴァン・シェイクが撮影したホウ=チャンク族インディアンの写真集『People Of The Big Voice』も刊行されている。元々ブラック・リヴァー・フォールズの先住民だったホウ=チャンク族だが、インディアン部族の抗争、そして白人に移民が感染させた水疱瘡のため、当初2万人いた人口が500人にまで減ってしまった。その末裔は現在ではホウ=チャンク自治体(インディアン駐留地)でカジノを運営している。

21世紀においても、アメリカ土着の呪縛のデス・トリップは続く。

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