史上最高のベーシスト50選

左からブーツィー・コリンズ、フリー、エスペランサ・スポルディング(Photographs used in illustration by AP/Shutterstock; Joseph Okpako/WireImage; Elaine Thompson/AP/Shutterstock)

ファンクマスターからプログレの神童、スラップ奏法の達人から超一流のセッションミュージシャンまで。ローエンドとは何たるかを体現してきた史上最高のベーシスト50人をカウントダウン形式で紹介。

「ベースこそが土台なの」数々の名演を残した伝説的セッションミュージシャン、キャロル・ケイはかつてそう語った。「ベーシストはドラマーと一心同体となってビートを生み出す。彼らの演奏は音楽を支える枠組みになる」

ポール・マッカートニーによるヒプノティックな「カム・トゥゲザー」のリフ、ジェームス・ブラウンの「セックス・マシーン」におけるブーツィー・コリンズの狡猾なバンプ、あるいはトーキング・ヘッズのティナ・ウェイマスが「サイコ・キラー」で刻むミニマルなパターンまで、優れたベースラインはまるで呪文だ。永遠に鳴り止むことがないかのように感じられるそのフレーズは、聴けば聴くほどに豊かさを増していく。ギタリスト/シンガーや管楽器奏者がスポットライトを浴び、ドラマーが溢れんばかりのエネルギーを全身で表現するのに対し、ベーシストは曲が終わった後も頭の中で延々と鳴り続けるような、楽曲における根本的な何かを生み出す。

ベーシストは然るべき評価を得られないことも多く、バンド内でさえ過小評価されることもある。「一番人気のあるパートではなかった」スチュアート・サトクリフ脱退後にベーシストとしてビートルズに加入したときのことについて、ポール・マッカートニーはそう語っている。「誰もベースはやりたがらなかった。みんな目立とうとしてたからね」

ポピュラー音楽に不可欠なベースという楽器は独自の歴史を築き上げてきた。デューク・エリントンのオーケストラでアップライトベースを弾いたジミー・ブラントン、ビバップのパイオニアたるオスカー・ペティフォード、ジャズ界の巨人チャールズ・ミンガスやロン・カーター。あるいは、セッションミュージシャンとして無数の名演を残したキャロル・ケイやジェームス・ジェマーソン。ロックの闘士ことクリームのジャック・ブルースやザ・フーのジョン・ウェントウィッスル。ファンクの達人ブーツィー・コリンズやスライ&ザ・ファミリー・ストーンのラリー・グラハム。プログレの神童たるイエスのクリス・スクワイアやラッシュのゲディ・リー。フュージョンの代名詞となったスタンリー・クラークやジャコ・パストリアス。パンク/ポストパンクを極めたティナ・ウェイマスやミニットメンのマイク・ワットまで、歴史に名を残すベーシストの枚挙には暇がない。オルタナロック全盛の時代には、直感的なプレイでソニック・ユースの核を成したキム・ゴードンや、プライマスで超絶テクニックを見せつけたレス・クレイプールが登場した。より最近では、エスペランサ・スポルディングやサンダーキャットがローエンドを基調とする音楽的世界観を確立してみせた。

【ランキング一覧】ローリングストーン誌が選ぶ、史上最高のベーシスト50選

ここでは本誌が発表した「史上最高のドラマー100選」と同様に、あらゆる時代やスタイルを選出対象としている。本企画は単にテクニックの優れたプレイヤーを讃えるのではなく、「偉大な」ベーシストの基準を定めようとするものでもない。ここで選出されているのは、ロックやファンク、カントリー、R&B、ディスコ、ヒップホップ等、半世紀に及ぶ歴史の中で誕生した(ケイの言葉を借りるならば)ポピュラー音楽の土台の構築に貢献したベーシストたちだ。超絶技巧で知られるテクニシャンもいれば、ミニマルなコンセプトによってバンドの音楽性を支えたプレイヤーも登場している。

「手に取り、ネックの上で指を滑らせ、感触を確かめるんだ」レッド・ホット・チリ・ペッパーズのフリーは以前、ベースの魅力についてこう語っている。「スラップしたり引っ張ったり、弾いたり叩いたりするうちに、自分が魔法にかかったように思えてくる。運が良ければあらゆる思考から解放され、自分自身がコードとスピーカーを通じて伝わってくるリズムの媒体となって、神から与えられたベースという楽器と一体化できるんだ」

ベースという楽器の魅力の虜となり、音楽史に大きな足跡を残したベーシスト50人を以下で紹介する。

Translated by Masaaki Yoshida

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