追悼マリク・B ザ・ルーツに成功をもたらしたMC/ラッパーの功績を振り返る

彼らの道はその後のアルバムで分岐し、ザ・ルーツの名声を高めたライブ・ショーにマリクはますます欠席するようになった。1999年にリリースされた『Things Fall Apart』では、ブラック・ソートが明らかにフロントマンとなっていたが、マリク・Bは依然として強力な存在だった。ファンに愛された 「100% Dundee」でブラック・ソートは“みんなマリクがどこにいるか知りたがってる。彼は俺のすぐ隣にいるんだ”と反抗的にラップしている。マリクはこの曲でリズムに乗った強盗を軽快に表現し、彼のベスト・ヴァースを披露した("Smash and grab the ice, crush your mental device / Thought twice, shoulda thought once, got played for the dunce")。その一方、彼のソロ・ショーケースとなった「The Spark」では、敬虔なイスラム教の信仰と、真っ直ぐで狭い道を歩むための葛藤について感動的にラップしていた。"まだハッジには行っていないけど、それが次のプロジェクトなんだ”。



このような葛藤から、彼は2002年の『Phrenology』の前にグループを脱退することになった。ブラック・ソートは楽曲「Water」の全編をマリクに捧げ、1991年頃のミラーズビル大学での出会いから、初めての成功体験、そして薬物問題が彼を蝕んでいくまでの歴史を語っている。"真っ直ぐ歩けばいい/高みを目指せばいい/君は通り過ぎるものを見逃しているぞ"とブラック・ソートはコーラスで訴えかけている。その後、彼は自分の気持ちをより明確に打ち出していく。"俺の気持ちは憎しみから遠くかけ離れている/君を愛しているとは言わない、感じてるというほうが相応しいから/M-illa(マリク)、君は詩人、息子、生まれながらのクリエイター"。これは失われたバンドメイトのために悲嘆にくれるマスターピースであり、ピンク・フロイドの「Wish You Were Here」と同じくらいパワフルな曲だ。

マリク・Bはザ・ルーツがデフ・ジャムと契約し、2006年の『Game Theory』でキャリアを再開した頃に復帰したが、彼がフィーチャリング・アーティストとして名を連ねたのはほんの一握りの出演に過ぎなかった。それでもファンは、彼がブラック・ソートと再び歌詞をトレードさせるのが聴けて嬉しかった。その中には、ザ・ルーツがいつかロックの殿堂入りを果たし(2018年からその資格が与えられている)、そこで2人の旧友が共演することを期待していた者もいた。それは果たされなかったが、マリク・Bがザ・ルーツと一緒に作ったレコードを聴けば、彼の声が持つ謙虚なパワーを思い出すことができる。



From Rolling Stone US.

Translated by Rolling Stone Japan

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