1970年代、音楽の舞台で再び活躍したエルヴィス・プレスリーを辿る

今週は5週目の最終週、1970年代編です。後期エルヴィスですね。でも、日本ではこの時期のエルヴィスが一番馴染みがあるかもしれません。フリンジというんでしょうか、白いひらひらの付いたジャンプスーツにもみあげ、これがアイコンになっておりますね。でも、音楽的な評価が一番定まっていないのがこの1970年代かもしれないなと思いました。この「Danny Boy」のような歌を歌っていた時代です。1960年代は賛否が分かれる時代でして、映画にずっと出ていたエルヴィスをどう思うかという話になると思うのですが、1970年代は全貌が知られていないんだと思います。評価できない、しにくい、そしてその頃のエルヴィスは音楽ファンの間で省みられていなかったと言っていいでしょう。アイコンのイメージが強い分、音楽が置き去りにされていた。でもある意味で一番音楽的だったのがこの時代だったのではないか? ということで今日はこの番外編の締めくくり。一番発見が多かった週でした。1曲目は1960年代の最後、1969年に発売され、米ビルボードで3位になり、キャッシュボックスでは1位になった。「In The Ghetto」です。



先週の最後に「明日への願い」という曲をお聴きいただきましたが、その続編のようなメッセージソングですね。シカゴの寒い朝、1人の少年がゲットーで、貧困の中で生まれて育っていく少年のお話です。1969年5月に発売になった曲ですが、1969年はウッドストックがあった時代ですよ。1960年代後半の混迷のアメリカが、ここにも歌われている。このような歌は1960年代のエルヴィスには全くありませんでした。



1970年に帰ってきたエルヴィスを音楽ファンはどう迎えたのか? 1962年の『グッド・ラック・チャーム』以来、7年ぶりの米ビルボード1位になった曲。レコーディングもメンフィスで行われ、その後のライブでも定番になった曲です。エルヴィス・プレスリーの記録はたくさんありますね。最もたくさんレコード・CDを売ったアーティストとして知られているということが1番の勲章でしょう。そして最も多くゴールド・ディスクやプラチナ・ディスクをもらった。最多ヒットシングルも彼が持ってるんですね。そして、亡くなった後に最も売り上げが多いという記録もある。亡くなってからも聴かれ続けている人でなんです。さらに、彼はアメリカのシンガーではありますが、イギリスでも最も売れたアーティストになっていますね。でも、音楽ファンにとって一番の損失は1960年代にライブを行わなかったことですよね。これがエルヴィスの音楽評価をやっぱり下げてしまったのではないかと思うんです。彼自身がやっぱり歌いたいということに立ち返った時期が、1968年から1970年代にかけて。1969年7月31日から8月28日まで、ラスベガスのインターナショナルホテルで始まったのが、「エルヴィス・オン・ステージ」と題されたコンサートですね。その後、1970年の2回目のショーというのが、アルバムにもなりました『エルヴィス・オン・ステージ』。その中からお聴きいただきます、当時のステージのオープニング曲「See See Riders」。さらに1970年5月発売でトップ10入りしたヒット曲「The Wonder of You」です。

Rolling Stone Japan 編集部

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