ローリングストーン誌が選ぶ、2020年の年間ベスト・ソング50選

4位 ザ・ウィークエンド「Blinding Lights」


ファジーなシンセサイザーと弾むようなドラムマシンのビートが特徴の「Blinding Lights」は、デュラン・デュラン一歩手前の新しいニュー・ウェーヴの傑作だ。誰も出ない電話や何かを感じるためだけのドライブ、孤独を表す光など、わずか3分の間にザ・ウィークエンドは、1980年代の有名ポップソングの要素をすべて網羅している。だが本当の魅力は、彼の声と記憶に残るキーボードのフレーズにあり、「I can’t sleep until I feel your touch(君に触れるまでは眠れない)」という歌詞にもあるように、80年代色の強い、最高の詩的ステレオタイプにザ・ウィークエンドが命を吹き込んだ後も消えない。—K.G.

3位 Christine and the Queens「People, I’ve Been Sad」


ロックダウンと自主隔離の繰り返しだった2020年は、前代未聞の孤独な1年だった。クリスティーヌ・アンド・ザ・クイーンズの「People, I’ve Been Sad」は、まさにそんな1年のアンセムだ。音数の少ないシンセサイザーのメロディーといまにも泣き出しそうな声とともに、クリスティーヌは英語とフランス語の歌詞でチャンスを逃す、消える、壊れるといった普遍的な瞬間を表現した。だが、クリスティーヌが「You know the feeling(あなたもこの気持ちを知っている)」と歌うと、彼女は見事に第4の壁を壊す。たしかに、こうした感情は、私たちには馴染みのあるもので、誰もが孤独や悲しみを抱えているかもしれないが、私たちを元気づけてくれるこの名曲のおかげで、少しだけ気分が良くなるかもしれないのだ。—K.G.

2位 ボブ・ディラン「Key West (Philosopher Pirate)」


ボブ・ディランの最新アルバム『ラフ&ロウディ・ウェイズ』に収録されている唯一のバラードではないものの、聴く人に限りなく深く暗い魔法をかける「キーウェスト(フィロソファー・パイレート)」は、ディランの新たな名バラードと呼ぶにふさわしい作品だ。9分間の中でディランは、フロリダをさまよいながら、幽霊のようなアコーディオンの調べに合わせて陽光の州ことフロリダのブルースを口ずさみ、「Key West is the place to be if you’re looking for immortality(不老不死を求めているなら、キーウェストに行け)」とうなり声をあげる。椰子の木の楽園にいても、ディランの心は廃墟の街にあり、このアウトローは、次の逃亡のチャンスを逃すまいと目を光らせているのだ。—R.S.

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1位 カーディ・B feat. ミーガン・ジー・スタリオン「WAP」


新型コロナウイルスの感染拡大によるロックダウンがもっとも厳しかったあのとき——それは自宅を出れば、本当に命を落とすかもしれないという歴史的な時期だった——カーディ・Bとミーガンは「Gobble me, swallow me, drip down the side of me/Quick, jump out ‘fore you let it get inside of me」とステイホームによるブルーな気分を払拭する最適な方法を教えてくれた。「WAP」は、2020年のアメリカがまさに必要としていた卑猥な現実逃避であり、音楽業界最強のふたりのサウンドは、楽しみや喜びが失われてしまったかのようなこの時期に大胆にも悦楽をテーマとし、真っ向から描いた。職場では絶対閲覧できない——とはいっても、ほとんどの人は職場に行くことができなかったし、少なくとも、きちんとシャツを着なければいけない環境にはいなかった——カーディとミーガンのミュージックビデオは、最高だった。NYブロンクス仕込みのカーディの過激さとミーガンの度肝を抜くフローは、ラップ史上屈指の傑作バディコメディを生み出した。その結果が、何年も語り継がれるこのセクシーなガールズ・サミットだ。—J.D.

Translated by Shoko Natori

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