中島みゆき、2021年に聴くべきセレクションアルバム 瀬尾一三とともに振り返る

時代 / 中島みゆき

田家:アルバム10曲目「時代」。1993年のアルバム『時代-Time goes around-』のバージョンですね。シングルにもなりました。報道番組『NEWS23』にも使われておりましたね。

瀬尾:ベストアルバムだと必ず入るのかもしれませんが、このアルバムに入れておきたかった。あとファンの方からすれば、なぜオリジナルバージョンではないのかと思うかもしれませんが、僕はこの曲を作ろうとした時に「今のあなたの声で時代を歌ってみませんか?」と言ってみたんです。発声が変わってからの歌い方と、今の年代の「時代」を歌ってみませんかと提案した時に、じゃあ歌ってみようかということで録音したんです。

田家:みゆきさんは、発声を意識的に変えた時期があるということですか?

瀬尾:そうです。僕と一緒に仕事するようになる前の話なので詳しくは知らないのですが。ボイストレーナーに昔のままの発声で歌っていると喉が潰れるよと言われて。当時から先を考えればこのままでは良くないと思っていて、夜会とかもやりたいと考えた時に一から発声を習ったんじゃないかと思います。

田家:この「時代」は、2012年にシングル『恩知らず』のカップリングで、2010年から2011年のライブバージョンが収められていました。時代が変わって時が積み重なって、彼女もキャリアを重ねるにつれて歌い方や解釈も変わっていったということはありそうですか。

瀬尾:仲間内を褒めているようですが、すごく愛が深まってますよね。僕も昔の歌謡祭の時の歌を聴いていると、冷静に世の中を見ている感じがしたんですよ。いわゆるドキュメンタリーフィルムを見ている自分が歌っているような感じ。でもこの新しいバージョンは、もっと目の前にいる人たちに対して歌っている感じがするんです。モノクロのフィルムを前にして歌っているのか、現実の中で歌っているのかという感じ方の違いがあります。僕はこっちの方が愛があって、優しい気がします。

田家:2011年の震災の後にも同じようなことを感じましたが、歴史というのは大変なことや涙を流すようなことのつながりですもんね。そうやって時間が経つほど、この歌の重みや愛おしさが増していくんでしょうね。

瀬尾:初めて彼女が「時代」を歌っているのを見た時に、「この子はこんな歌を書いちゃって最終的にどうするんだろう? 初めから起承転結の結を書いてしまったら、これからどうするんだろう?」と思ったんですが、お見それしました。起承転結の起でもありました。ここから色々なところを知れば知るほど、あの頃の僕は浅はかだったな、失礼しましたと思いますね。

Rolling Stone Japan 編集部

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