ザ・クロマニヨンズ、有観客ライブで示したロックの普遍性

アルバムの曲順で言えば、次の曲で最後になるはずだが「最後の1曲はもうちょっと後に取っておいて、少しパーッと盛り上がろう。今日はお祭りにしましょう」と、ラストスパートへ向けて「東京ブギズキ」、「エルビス(仮)」、「タリホー」などテンションの上がるアッパーなキラーチューンが続く。このパートでの「どん底」は特に"このままでは終わらない じたばたで どたばたで てんやわんや"、"どん底だからあがるだけ"と、コロナ禍とそれに渦巻く混乱にいる観客が勇気づけられる曲だ。当時を知らない世代の若者が、ザ・ブルーハーツやザ・ハイロウズの曲を今でも聴いて歌っているように、ヒロトとマーシーのやってきた音楽はいつも誰かの背中を押してきた。それはもちろんザ・クロマニヨンズでも変わらない。そしてそれは、ロックの典型的なイメージの反抗や社会への強いメッセージのみならず、曲を聴いてくれる人々が押しつぶされそうな時に寄り添う優しさを提示してくれた部分も大きい。そう感じた一場面だった。

このままアルバム最後の曲「かまわないでくださいブルース」でライブは終演するかと思いきや、「オマケ! オマケやります。今年最初のライブとっても楽しかった! ありがとう!」と言い、そのまま「エイトビート」、「ギリギリガガンガン」、「ナンバーワン野郎!」と最後にアクセル全開で駆け抜けて、ライブは幕を閉じた。最後まで「楽しかったー!」と笑顔で叫ぶヒロトの姿は脳裏に焼き付いて離れない。


甲本ヒロト(ボーカル,Photo by 柴田恵理)

気がつけば、公演タイトル通り、ライブ中ずっと自然と曲に合わせて身体全体が揺れていた。配信ライブでは久しく感じられなかったが、これが生の音が持つエネルギーであり、彼らのロックの力である。どんな社会状況でも彼らが鳴らすロックンロールは変わらずまっすぐ届いてくる。だからこそ、辛い時ほど彼らが頼もしく、力強く、心強く感じられる。彼らのロックは、まだまだ僕らには必要だ。



<公演情報>

ザ・クロマニヨンズ
「ザ・クロマニヨンズ MUD SHAKES 2021」

2021年2月20日(土)東京ガーデンシアター
=セットリスト=
1. VIVA! 自由!!
2. 暴動チャイル(BO CHILE)
3. 浅葱色
4. 新オオカミロック
5. カーセイダーZ
6. ドンパンロック
7. クレーンゲーム
8. 生きる
9. ペテン師ロック
10. 妖怪山エレキ
11. メタリックサマー
12. 空き家
13. 新人
14. ふみきりうどん
15. 東京ブギズキ
16. エルビス(仮)
17. どん底
18. 突撃ロック
19. タリホー
20. かまわないでくださいブルース
21. エイトビート
22. ギリギリガガンガン
23. ナンバーワン野郎!

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