浅井健一がドラムを叩いた理由
―この曲では浅井さんはドラムも叩いていますね?
浅井:そうだね。
UA:頭の部分だけ使ったんだよね。
浅井:椎野さん嫌がってたと思うけど(笑)。
UA:そんなことないでしょ。結果的にああなったことはおもしろかったし、ベンジーが叩いたこともおもしろかったし、あれこそがセッションだから。ベンジーのドラムが頭についているか、ついていないかで、曲の印象はだいぶ違うと思うんですけどね。
―浅井さんはどんなきっかけでドラムを叩き始めたんですか?
浅井:「あそこに何かが欲しい」ってUAが言い出して、「何を入れたらいいだろうね」って話をみんなでしてたと思うんだけど、いろいろみんなでやっとって、その中の一つとして、「じゃあ俺がドラム叩いてみる?」みたいにやったんだと思うよ。
UA:基本的な構成も含め、リハーサルで詰めたままをやろうとしてたんですけど、ちょっとしたエディットの妙で、何かできないかなって常に目を光らせてたんですよ(笑)。あの時、私がやりたかったのは、イギリスの女の子でギターを弾きながら歌うリアン・ラ・ハヴァスっているじゃない? 彼女の歌、けっこう好きでよく聴くんだけど、彼女がレディオヘッドの「ウィアード・フィッシュズ」をバンドのメンバーと演奏しているMVがあって、ドラムの子が最初、曲とは全然違うドラムを叩いてると思ってたら、急にメインのドラムに入るんだよね。それを見たとき、かっこいい!と思って、その感じがAJICOもあったりすると、すごく新しいと思って、みんなでアイデアを出し合っていたら、ベンジーが「俺が叩いてみるわ」って。で、それをそのまま採用っていう。自分が思ってたこととは違うんだけど、結果、おもしろくなったからすごく気に入っている。
―まさにバンドならではのケミストリーじゃないですか。話を聞いただけでかっこいいと思いました。ところで、さっきUAさんもおっしゃっていたように、20年前の『深緑』ももちろん最高なんですけど、そこに戻るわけではなく、新たに最高のもの、楽しいものを作ろうとしているところが、さっき新しい夜明けを見たと表現しましたけど、今回の『接続』は聴きどころだと思います。おふたりは改めてどんな作品になったという手応えがありますか?
UA:この間、ベンジーとも話したんですけど、日本人の民族的な情緒を作っているのってやっぱり何よりも四季だと思うんですよね。で、『接続』は偶然、4曲入りなんですけど、まるで春夏秋冬みたいにできたなって思っていて。
―あぁ、確かに。
UA:AJICOも4人だし、本当にちょうどいい感じが。多すぎても違った気がして、あれ以上やったら大変になった気もして。久しぶりに集まってやるには、本当に適量な作品になったし、自分でサウンドを詰めていくことを考えても、これぐらいがちょうどよかったと思ってるんですけど。
浅井:どれが夏かな?
―「地平線 Ma」じゃないですか。
UA:そうだね。夏っぽいかな。本当に、それは受け止め方一つだよね。こっちがこの曲は夏ですみたいに言うつもりはないんだけど、AJICOらしい季節が全部うまく表現できたような気がしてますね。
浅井:さすがだね。説明がうまい(笑)。
UA:それがまたライブで、生で演奏したとき、また一味変わってきているのがちょうどおもしろくて。AJICOはレコーディングも楽しいけど、やっぱりライブのバンドだよなって実感が今はありますね。その意味では、ライブを観てもらって、空気を通して生で感じてもらうために窓を開いたのがこの『接続』という作品だったのかな。
―浅井さんはどんな手応えがありますか?
浅井:まさにUAがうまい具合に言ったなと思って。UAと同じだよ。