煮ル果実が語る、新作ミニアルバムに込めた矛盾や葛藤への肯定

―「音楽で人間を描きたい」という部分とつながっていると思うんですけど、今作を聴いたとき、ボーカロイドに持っていた機械的なイメージとは違ってすごく人間味を感じました。そこで訊きたいのですが、煮ル果実さんが音楽家としてボーカロイドを使って自分の表現をしているのはどうしてなんですか。

そもそも、ボーカロイドはカルチャーとして捉えているというより、自分が音楽を普通に聴いている延長線上にあって好きなものだったんです。僕はいろんなジャンルの曲が好きなので、それが1点に集まっている場所が魅力的に映ったんです。そこからリスナーとしてどっぷりハマっていって、何年かして自分もその中に加わって発信したいなという気持ちがあったから、ボーカロイドで曲を作ってきたんです。邦楽も洋楽も幅広く聴いていて、ボーカロイドもその中の1つとして聴いてきた感じですね。

―エレクトロ、ロック、ポップスだけじゃなくて、ジャズ、ビッグバンドっぽいイメージの曲もありますよね。アレンジはジャンルを固定せずに曲ごとに考えているんですか。

最初に、こういうリファレンスにしようというのは、自分の中にあるんですけど、作っているうちに変化していくんです。入れる音もそれによって千差万別で、最初から決めた通りになった曲は1曲もないかもしれないですね。その偶然を楽しんでいる感じです。

―大枠として“消費”というテーマがある中で、すべての曲を作り始めたんですか。

最初は、タイトルを統一するところから始めました。今の時代って、みんな配信で単曲で聴くので、そもそもアルバム単位で聴かなくなってきてると思うんです。その中で、タイトルを統一することで、この曲たちはまとめて聴くのが正解なんだよっていうことをわかりやすく提示できたかなと思っていて。タイトルは6文字で統一していたので、6曲収録するつもりで作っていたんですけど、何か足りない気持ちもあって、縁起の良い7にして、プレゼント的な気持ちで7曲作りました。ちょっと前向きになるような要素として、7曲にしたというのもあります。

Rolling Stone Japan 編集部

Tag:

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE