エネルギー超大国、ロシアの「暗い未来」

「地政学も変化している」

ウクライナ侵攻がはじまると、欧州連合はプーチン大統領と早急に袂を分かった。ロシアからヨーロッパに天然ガスを輸送する大々的な新パイプライン計画「ノルドストリーム2」も放棄された。ガスを燃料とするヒーターの代わりに使えるヒートポンプの広告がフランスの鉄道駅に出現した。筆者がこの記事を執筆している現在、欧州の首脳たちはロシアからの化石燃料の輸入の全面禁止には抵抗している。ドイツのオラフ・ショルツ首相は、ロシア産ガスは市民の日常生活を支えるうえで「きわめて重要である」と述べた。

だが長い目で見ると、ロシアのエネルギーに対する欧州の依存がやがて解消することは決定的だ。同時に、気候変動がいままで表面化していなかった——ウクライナ紛争が起きるまでは——経済的・政治的な動きの推進力であることを示す証拠もある。「変わっているのは、地球の気候だけではありません」と、米首都ワシントンのCenter for Climate and Security(気候および安全保障センター)のディレクターを務めるエリン・シコルスキー氏は指摘する。「地政学も変化しているのです」

経済大国のパワーバランスも急速に変化している。電気自動車メーカーのテスラの時価総額は、「米ビッグスリー」とされるネラル・モーターズ、フォード・モーター、クライスラー(現フィアット・クライスラー・オートモービルズ)の合計を上回った。アフリカ諸国は、資源を搾取することに熱心な富める投資家たちとの戦いの最中にある。特に需要があるのはリチウム、ニッケル、コバルト、マンガン、グラファイトだ。どれもスマホから電気自動車に至るまで、あらゆるものを稼働させるバッテリーに必要不可欠なものだ。「世界のコバルトの70%は、目下コンゴ民主共和国で生産されています」とバーク氏は述べる。「これは、コンゴ民主共和国にとっても、世界中の人々にとっても由々しき問題です」

ウクライナ紛争が何かを証明したとしたら、それは化石燃料ギャングもそう簡単には引き下がらないとうことだ。ブラジルのジャイル・ボルソナロ大統領は、炭鉱会社によるアマゾンの熱帯雨林の略奪を容認している。中東の石油カルテルは、世界の原油価格の安定化を求めるバイデン大統領の要請に応じていない。それに加えて、仮にウクライナ紛争がエネルギー超大国ロシアの支配に終止符を打ったとしても、世界を滅亡に追い込むことができるだけの核爆弾をプーチン氏が所持しているという恐ろしい事実は消えない。「紛争後は——」とツァフォス氏は言う。「ロシアは孤立し、経済は壊滅的な状態に陥るでしょう」。ツァフォス氏は、ロシアの運命をベネズエラ、イラン、北朝鮮などの追い詰められた国家と重ねた。

【写真】ウクライナ軍に破壊されたロシアの戦車

from Rolling Stone US

Translated by Shoko Natori

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