カミラ・カベロが語る「自分らしさ」とラティーナの誇り、多様性のセレブレーション

カミラ・カベロ

 
カミラ・カベロが2年半ぶり3枚目となる最新アルバム『ファミリア』をリリース。エド・シーランやウィロー(ウィル・スミスとジェイダ・ピンケット・スミスの娘)も参加した本作について、日本盤ライナーノーツを執筆した音楽ライターの新谷洋子に、カミラ自身の発言も交えつつ解説してもらった。

ダイアナ・ロス、ビヨンセ、そしてカミラ・カベロ――などと名前を並べるのは、時期尚早だろうか? そもそも人気ガールズ・グループから独り立ちして、グループ時代以上の成功を収めたアーティストを探しても、このふたりくらいしか前例がない。そういう意味では、5年前にソロ・デビューしてからというもの、偉大な先輩たちの背中を追って邁進してきた彼女にとって、本作『ファミリア』は重要な一歩になるような気がするのだ。

もとを正せば、アメリカ版『Xファクター』第2シーズン(2012年放映)のオーディション過程で、同じく音楽界を志す4人の女性とフィフス・ハーモニーを結成し、3位入賞を経てデビューを果たしたカミラ。アメリカでは、ビヨンセを擁したデスティニーズ・チャイルド以来の大型ガールズ・グループとして彼女たちは着々とブレイクに至ったのだが、2016年に脱退したカミラは、ソロで再出発してからも順風満帆にキャリアをナビゲートしてきた。翌年秋にはシングル「ハバナ feat. ヤング・サグ」で英米ほか各地のチャートで1位を獲得し、2019年にも当時交際していたショーン・メンデスとのデュエット曲「セニョリータ」で、世界中でナンバーワン・ヒットを記録。1stアルバム『カミラ』(2018年/全米チャート最高1位)と2作目『ロマンス』(2019年/同3位)はアメリカ国内で相次いでミリオン・セラーとなり、チャート成績においてはフィフス・ハーモニーを超えて、現代アメリカきっての若手女性ポップスターのひとりへと成長を遂げている。




じゃあ、彼女がソロ・アーティストとしての立ち位置を難なく確立できたのはなぜか? ひとつに、12歳の頃からアコギを練習して曲を作っていたカミラが、シンガー・ソングライターとして一貫して自分自身の言葉で歌っていることが挙げられる。と同時に、ヒスパニック・アメリカンという出自をより鮮明に打ち出したことも無関係ではないだろう。前述した2枚の全米ナンバーワン・シングルを始め、ラテン・ポップに接近した曲を織り交ぜるようになっただけでなく、殊にトランプ政権下では移民の視点から積極的にポリティカルな発言を行なってきた。メキシコ人の父とキューバ人の母を持ち、幼い頃に生まれ故郷のキューバからアメリカに移り住んでマイアミで育った彼女は、次のように自分の家族を語る。

「両親と私と妹は、厳しい経験をしてきたことによって結束が固くなったわ。父と母がアメリカに渡ったのは、すでに32歳くらいになっていた頃だと思うんだけど、ふたりはとても苦労したの。そして私自身も大変だった。両親は私が受け入れられ、愛されていると感じられる自分の居場所を常に作ってくれたし、私と妹のためなら何でもやってくれた。というわけで、私の家族に何らかのルールがあったとすれば、それは、お互いを支え合い、忠実であることの重要性ね。忠誠心というのは、私の家族の中ではとても大切なことなの」。



そんなカミラが、かつてなくヒスパニック・アイデンティティを前面に押し出し、自分のルーツに、そして自分の内面にも深く踏み込んでいるのが、ここに完成した3rdアルバム『ファミリア』なのだ。世代や人種やイデオロギーによる分断線があちこちで露出している昨今の世界において、多様性のセレブレーションと呼ぶべき本作は、広く社会的なインパクトを持ち得る作品だとも言えよう。

「毎回アルバムを制作している時は、聴き手のことはあまり意識しないの。私自身のためのものであって、喜び、透明性、感情の解放、創造的表現といった意味で自分が何を得られるのか、ということ。だから私自身とコラボレーターたちの間で、どうやったら最高に楽しめるかが全て。感情的、精神的、創造的、そして気持ちの上でどうやって最高のものを引き出すかということね。だから、完成してこんな風にアルバムについて話すようになるまでは、世界の人が聴くのだということをあまり意識しない。でもそういった社会的なインパクトについては、うれしく思うわ。私はラテン系を代表していることを誇りに思うし、女性であること、答えを模索している若者であることを誇らしく思う。そういう私の姿に人々が自分を重ねるというのがうれしいの」。

 
 
 
 

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