伝説のあの日から40年、『オフコース・クラシックス・コンサート』開催

第2部は「愛の唄」から。西村貴之のサックスをフィーチャーしたアレンジが、楽曲のメロディの美しさを“剥き出し”にする。このクラシックコンサートは、オフコースの楽曲のメロディがいかに美しく瑞々しいかを再確認する場でもある。70年代から、多くの人の心を震わせる音楽を奏で続けてきたオフコースへのリスペクト、愛を、服部隆之のアレンジ、出演アーティストの歌から感じることができる。


中川晃教(撮影:成瀬正規)


服部隆之(撮影:成瀬正規)


美しいロックバラード「いくつもの星の下で」では、さかいゆうと中川晃教のコラボが実現。二人のユニゾン、ハーモニーは絶品だ。アルバム『We are』(1981年)は、スティーリー・ダン、ボズ・スキャッグス、TOTOなどを手がけた名エンジニア、ビル・シュネーを起用し、5人のオフコースのサウンドが確立された名盤と謳われている一枚で、その一曲目の「時に愛は」は、まさに新しいオフコースの幕開けを感じさえてくれる一曲だ。この日もバンドサウンドを前面に打ち出し、稲垣潤一が丁寧にかつエモショーナルに歌う。「でももう花はいらない」は1973年6月5日に発売された、オフコースの1stオリジナルアルバム『僕の贈りもの』に収録されている49年前の作品だが、オーケストラアレンジされ、クラシック曲のような普遍性とやはり瑞々しさを感じる。このポップス×シンフォニックのコンサートが4回も続いている秘密はここにある。オフコースの音楽が持つ普遍性、何度聴いても新鮮で新しい発見がある、クラシック曲のような佇まいだからだ。


矢井田 瞳(撮影:岩田えり)

「秋の気配」は矢井田瞳と辛島美登里のコラボで披露。男性目線の歌詞がさらに愁いを帯び、伝わってくる。佐藤竹善が歌った「生まれ来る子供たちのために」は、このポップス×シンフォニックのコンサートの、ひとつのクライマックスと言っていいほどの“意味”と感動を伝えてくれた。小田和正が曲に込めた思いを、ひとつ残さず、かつそこに自身の思いを乗せ歌う佐藤の思い、オリジナルの温度感を活かしながら、さらに歌をまっすぐ、感動的に伝えるアレンジとオーケストラの演奏。ステージ上にいる全ての人の思いが“塊”となって、客席に向かってきて、そして包み込んでくれる。


辛島美登里(撮影:岩田えり)

柔らかなストリングスが印象的だった「愛の中へ」は、矢井田瞳が優しく、愛情を感じさせてくれる歌を披露。ソン・シギョンは、このコンサートの基点になっているアルバム『オフコース・クラシックス』(2019年)でも歌っている「君住む街」へを披露。歌詞の行間に浮かぶ感情までも、丁寧に掬いとって表現するように歌ってくれる。CHEMISTRYが歌った「眠れる夜」では客席から手拍子が起き、オーケストラの演奏も一段と熱が入る。ラストナンバーは「YES-YES-YES」。まずMs.OOJAが登場し、歌い始めると、この日のキャストが徐々にステージに登場。この曲も静かな始まりから徐々に盛り上がっていき、爆発的なサビで盛り上がる壮大な曲だが、最後はオールキャストが登場。

1982年6月30日、全ての演奏を終えたオフコースの5人がステージから去り、コンサートの終わりを告げる客電が点き、「ひととして」に続き「YES-YES-YES」が会場に流れる。ステージ上では撤収作業が進む。しかしお客さんは誰も帰ることなく、5人が再びステージに登場することを願いながら、祈りを込めて「YES-YES-YES」を大合唱する。そんな感動的な光景が映像作品にも収録されているが、40年後の同じ日、同じ場所でも、この曲の大サビ部分で客電が点き、オールキャストの声が重なり、客席では一人ひとりが心の中で歌い、大合唱になり感動が広がっていく。

鳴りやまないカーテンコール。映像作品『Off Course 1982・6・30 武道館コンサート』のエンディングと同じように「NEXTのテーマ」の音源が流れる中、武道館、東京の夜景が映し出される。この曲は最後に<ララララ~ 何も見えない明日に向かって 走る僕等がいたね>という小田のボーカルが入っている。小田の声がこのコンサートの“締め”になっているようで、駆け付けたファンと出演者の思いと重なり、最後の最後まで感動させてくれた。

オフコースというグループが、その後に登場したアーティストに与えた影響は計り知れない。そして日本の音楽シーンに残した功績の大きさを考えると、その音楽を後世に伝えておいくためにも、このコンサートは是非続けて欲しいと思った。

その音楽を後世に残すという意味では、これまで映像作品としてのみリリースされていた『Off Course 1982・6・30 武道館コンサート』が6月29日に、最新リマスタリングが施された高音質SHM-CD「1982・6・30 武道館コンサート 40th Anniversary」として初音源化されたことも大きい。あの日の感動は色褪せない。(文:田中久勝)



<リリース情報>

オフコース武道館コンサート40周年記念
『Off Course 1982・6・30 武道館コンサート40th Anniversary』
2022年6月29日(水)発売
2CD(SHM-CD)
価格:3000円(税抜)/ 3300円(税込)
https://www.universal-music.co.jp/offcourse/products/upcy-7781/

=収録内容=
[DISC-1]
1 NEXTのテーマ~僕等がいた
2心はなれて(インストゥルメンタル)
3愛の中へ
4メインストリートをつっ走れ
5君を待つ渚
6思いのままに
7哀しいくらい
8夜はふたりで
9さよなら
10僕のいいたいこと
11心はなれて

[DISC-2]
12言葉にできない
13一億の夜を越えて
14のがすなチャンスを
15 YES-NO
16愛を止めないで
17 I LOVE YOU
18 YES-NO
19 YES-YES-YES
20 NEXTのテーマ
※2022年8月発売予定の『1982・6・30 武道館コンサート40th Anniversary BOX』に、当LIVE CDも同梱されます。

Rolling Stone Japan 編集部

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE